356 / 506
第356話 バレンタインの後 3
「卒業旅行?お前卒業まだじゃん」
「……は、はい!卒業されるのは先輩方ですが、その先輩と素敵な思い出作りに、旅行に行きたいなーと思いまして」
「思い出作り……」
「そう!思い出作り!」
「その心は?」
「ぬ」
次の日の午後、霧緒がうちにきて一緒に昼飯を食べていた。
玲二は菊池先輩と会う為に、朝起きて早々に帰ってしまったのだ。
ばあちゃんはお友達と、ホテルビュッフェへと出かけている。
本日の昼飯はミートソーススパゲティ、自慢じゃないが俺のミートソースはうまい。
なぜなら、俺が好きだから!
市販の物とは一味違うんだぜって胸を張って言える。
そのスパゲティを二人で食べながら、温泉旅行の計画の話を霧緒に説明していた。
食べる姿もまったく隙がなく、めっちゃカッコよい俺の彼氏は、俺の心を見抜くのがうまいというかなんというか……
「詩のその浮かれ具合はそこじゃないよな?」
「ぬぬ……」
俺、浮かれてるか……?
ど、どの辺が浮かれポイント?
良く分からないけれど、なんかバレてれるらしいし、霧緒に隠す必要もないので、今回の旅行の目的を正直に話した。
「あぁ…あいつらか。確かに俺たちとは違って会う回数は少ないよなぁ……宗太も欲求不満そうだったし……可哀想だとは思った」
「だろ?だろ?玲二も今までかなり我慢してたし、菊池先輩の受験終わって会う時間は増えたみたいなんだけど、イチャイチャするのに制限あって不満らしい。玲二の家には類いるし」
「……類か……あいつ露骨に邪魔してきそうだな」
「だろだろー!霧緒と菊池先輩が卒業したら、4人で会えるのもこれから少なくなるだろうしさ、このタイミングで行けたらいいなーって思って」
そうなんだ。
もう霧緒と菊池先輩は卒業してしまったら、当然もう学校には来ないわけで、本当に皆と一緒に過ごせる日は数えるほどしかない。
それを考えると、胸が痛くなってきてしまう。
霧緒のことを「キリ先輩」って言えるのも、もう残り少ないんだ。
…何か…ツラ……
ともだちにシェアしよう!