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第358話 卒業2

…… 「高校三年間なんて、あっという間なんだろうなぁ……」 「……ん」 「ちゃんとさ、笑顔で送り出してあげないとだよな」 「……ん」 まだまだ寒いこの季節、約一年前に霧緒と初めて会った日も風が強くてとても寒かったのを覚えている。 その時の霧緒は不機嫌で、愛想最悪くてギラギラした獣のようだった。 こんな怖い先輩とお隣同士で仲良くなんてできないと思ったわけで…… でも学校の女子がワーキャー騒ぐほどカッコ良くて色っぽくて、その文句のつけようのない容姿プラス頭も良いときた。 女子が騒ぐのもわかるし、好きになるのがわかる。 俺もその内の一人だったんだ……それで気がついたら好きになっていた。 勿論あの容姿だからついつい瞳で追ってしまうし、あの色っぽい瞳に見つめられれば、ドキドキしてしまうのは皆同じだろう。 付き合っている俺だって、未だにドキドキするんだから。 でも……みんな霧緒のことが好きな筈なのに、近寄りがたいとか、緊張して何話したらいいかわからないと言う。 独特な雰囲気はあるけれど、そんなことはない。 俺達が先輩後輩として仲が良いことは周囲は知っているので「宮ノ内先輩と何話すの?」ってよく聞かれるけど、どうってことない普通の会話だ。 ぶっちゃけ俺がくだらない話ばかりしている気がするけど、それは自然なことだし、そんな特別なことではない。 ふーんとか、へぇーとかそんな返事が返ってきたり、たまに鋭い突っ込みが返ってきて、あわあわ焦るけど、そんな何気ない言葉のやり取りが心地好い。 みんな霧緒のことを誤解しているんだと思う。 近寄りがたいどころか、一緒にいると楽しいし落ち着くぞ?それは会話が無くてもいいし、べたべたしていなくてもいい。 同じ空間にいると不思議と安心できるから……飾らない自分でいられる気がする。 それにな、べたべたしちゃうとあれだあれ…… ほら、あの色っぽい瞳とあの腕に抱きしめられたらさ、ムラムラしてきたりするからいかんのだよ。 でもみんなに俺と同じように、霧緒のことを理解されてしまうのもちょっとあれか……ムラムラされても面白くないしな。 恋人にしかわからない霧緒の良さは自分だけの宝物だし、ムラムライチャイチャしていいのは俺だけだ! ……でも、やっぱりさ……憧れの先輩が卒業してしまう寂しさはみんな一緒だと思う。 卒業式くらいは女子のみんなに宮ノ内先輩を貸してあげよう。 別れの挨拶とか写真撮ったりとかさ、したいよね? しかし…… お、おさわりは……許さんぞぉ……

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