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第359話 卒業3
それと卒業式に合わせて、あの人が帰って来た。
あの人とは勿論、霧緒のお母さんの友子さんだ。
相変わらずの美しさで、スレンダーな体型はモデルさんみたいで、やっぱり霧緒に良く似ている。
今回は霧緒の卒業に合わせての帰国だけど、長いイギリス勤務が終わり、日本の本社に戻って来ることが決定したみたいだ。
ちなみに恋人の園田さんはすでに日本に帰国していて、バリバリ仕事をしているらしい。
「……別に戻って来なくていいのに……」
そんな愚痴を溢していた霧緒だけど、やっぱり親子なんだからさ、少しでもコミュニケーションをとって欲しいなって思う。
いくつになっても大切な家族なんだから……
卒業式当日、予想していた以上に霧緒は人気で、式とHRを終えた後は一緒に写真を撮りたいと殺気立つ女子や男子生徒達に囲まれていた。
……おースゲー……
俺は少し離れた場所からその様子を眺め、これは長丁場になりそうだと思い、そっとその場を離れる。
最後くらいは面倒臭がらず、後輩達にちゃんとサービスしてあげるんだぞ?
そう霧緒に言っておいたし、本人もそのつもりみたいだから時間はかかるだろうな。
「詩 く ん」
「あ」
「あーん!詩くん!また少し大人になったかしら?ン……あら……なってないかしら……」
「友子さーん!なんすかその言い方!俺成長してるでしょ!」
挨拶代わりにギュッと抱きしめられ、華やかな薫りに包まれた。
落ち着いたスーツを着た友子さんはスラリとしていて、とても綺麗だ。
俺の腕に絡んで来て、自然と肩に寄りかかってくる様子は愛嬌があって可愛らしく思える。
「あー!うちの子も詩くんサイズなら良かったのにー。これくらいが丁度良くて私は好きよ。霧緒も汐里もちょっと大きくて、抱きしめ具合がいまいちなのよね。霧緒は凄く嫌がるし」
「そ、そうなんですか」
「詩くん、もう身長伸びなくていいからね?縦にも横にも伸びちゃ駄目よ?あーなんで詩くんのお肌そんなに綺麗なのかしら?ぷるぷるツヤツヤー!」
頬っぺたをムニムニとつねられて、流石に恥ずかしくなってきてしまう。
「と、友子さーん!それやめて!あ、あーあの!どうするんですか?霧緒と一緒に帰ります?」
「は?そんなのするわけないじゃない。先に帰るわよ。その前に詩くんとイチャイチャしてから帰ろうと思って」
「そうなんですか」
「そうよーだからちゃんとうちの馬鹿を連れて帰ってきて頂戴ね、詩くん」
パチンとウィンクしながら優しい笑みを浮かべる友子さんは、俺の胸をトントンと軽く叩いた。
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