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第360話 卒業4
群衆から外れ、校門まで友子さんと一緒に並んでゆっくりと歩く。
その間も俺の腕には友子さんの腕が絡んでいて離れない。
「……詩くんって、こういうの自然にできちゃうのよね。危ないわ~気をつけなさい」
「え!だって友子さんがしてきたんじゃないですか」
「……ふふふ、そうよね。これって私の特権よね。霧緒に感謝しなくちゃね」
「え」
「霧緒と仲良くしてくれて有難うね」
「あ……」
「大丈夫。霧緒からちゃんと話聞いているから。聞いて~うちの鍵を詩くんに渡す時にね、詩くんのこと大切な人だって言ってたわよ?っとに……ガキの癖に一丁前に言うわよねー!ふふふ……あははは!」
「マ、マジですか」
そう……クリスマスに霧緒と一緒に過ごした時に俺は宮ノ内家の自宅の鍵をプレゼントとして受け取っていた。
友子さんにも了解を得ていると言っていたのを思い出した。
「うん、いいのー?うちの馬鹿息子なんかで?大変よ?産んだ私が言うのも何だけど、外見あれだけど中身面倒でしょ?詩くんに迷惑かけてるんじゃない?今ならまだ後戻りできるけど、本当いいの?」
そう言いながら、絡む腕に力が入るのがわかった。
微笑みながら見つめてくる瞳は鋭くて真剣で、俺から本音を引き出したいという想いが伝わってくる。
……でも語りかける口調は明るくて優しくて、俺への気遣いが感じられ、心がくすぐったい。
ゆっくり歩いていた足がとまり、友子さんの正面に向き直る。
「……霧緒が言った通りです。俺にとっても霧緒は大切な人です。俺、まだ高校生だし子供かも知れないけど……霧緒がいないとか考えられないし……この先もずっと一緒にいたいって思ってます」
「……」
「そ、それに!霧緒は面倒なときもあるけど、優しくて可愛い奴ですッ!」
「ぶーーーーッ!!!あははは!!」
「と、友子さんッ!」
「ご、ごめんなさいね!ごめん!あ、あの子が優しいとか、か、可愛いとか!!本当?やだ可笑しくて涙が出ちゃう」
「だ、だって本当に本当なんですよ!」
「あはは……詩くん……有り難う。嬉しいわ……本当あなた良い子ね」
「……」
「うん、有り難う。あなたがそう思っているということは、そうなんだと思う。霧緒があなただけに見せているのね……ったく小さい頃はまだそういう可愛らしいところもあったんだけど……今じゃクソ生意気なガキにしか見えないわ……詩くん」
「はい」
「霧緒のこと、これからもよろしくね」
「は、はい!」
「こんな可愛い息子ができて私も嬉しいわ。じゃぁ、私は先に帰るから!後よろしくねー!」
え!え?息子?って?動揺しあわあわしていたらチュッと頬にキスをされてしまい、さらに焦ったけど、手を振りながら去っていく友子さんの笑顔は美しくて爽やかだった。
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