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第361話 卒業5
「詩ー!どこ行ってたの?」
「ん、霧緒のお母さんそこまで送ってた。先に帰るって」
友子さんを送り、校舎に戻って来ると、花束を抱えた玲二と菊池先輩が、丁度帰ろうとしているところだった。
「わ!菊池先輩……ボロボロじゃないですか」
「はは……皆さぁ遠慮ってものを知らないのかな。っとに人気者はツラいよぬ。屋内荷物持って貰って悪いな」
「大丈夫です。お花沢山貰いましたねー凄い」
「あーー!お花抱えてる屋内……めちゃくちゃ可愛い。なにそれー萌える」
「え!」
玲二を眺めてニコニコしている菊池先輩だけど、ブレザーやワイシャツに至るまでのあらゆるボタンが外されてなかった。
「追い剥ぎに合ったみたいですね……」
「だよねー!でも……これは確保しておいたから」
ニコニコ笑顔で菊池先輩がスラックスのポケットから取り出したのはネクタイ。それをキョトンとしている玲二の首にゆるりとかけてあげる。
「うちのネクタイは学年関係ないから屋内くん?これ使ってあげてね?」
「……い、良いんですか?」
「あはは、勿論~」
「あ、有り難う……ござい……ま……」
……その先は言葉にならなくて、花束に顔を埋めた玲二の表情は見えなかったけど、菊池先輩の玲二に対する想いを少し覗かせてもらったきがした。
……玲二……良かったな。
「菊池先輩、卒業おめでとうございます。俺キリ先輩探して来ます」
「ん、ありがと萩生。アイツのこと、よろしくな」
「はい!」
中庭やグラウンドには姿が見当たらず、三年生専用の昇降口に向かうと、女子たちが霧緒の居場所を教えてくれた。
校舎と体育館の間に設置してある自販機で飲み物を買っている姿が見える。
俺の存在に気がつくと、小銭を追加して入れてくれ、飲みたいジュースのボタンをポチリと俺が押した。
「えへへ、有り難う」
「いいえ」
自販機脇のベンチに二人で座り、ペットボトルのスポーツドリンクをゴクゴクと飲む霧緒の喉仏を眺めながら、自分も紙パックのカフェオレを飲んだ。
霧緒の姿も菊池先輩同様追い剥ぎに合ったみたいになっていて、ワイシャツははだけ無残な状態だ。
中にTシャツを着ていたから、霧緒の裸は見られなくて良かったとホッとする自分がいる。
は!
ネクタイが!ない!
さっきの菊池先輩と玲二のやり取りを見てしまった俺は、霧緒のネクタイの行方がとても気になっていたのだ。
ペタペタと霧緒のあらゆるポケットを探して見たけど、それは見つからなかった。
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