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第363話 卒業7
「頑張れって……」
「……」
ポンポンと頭を撫でられると、急に足取りが重たくなり鼻の奥がスンとしてくる。
霧緒と過ごした思い出が、この一年で沢山出来て、学校で過ごしたあんなことこんなこと、そんなやらしいエッチなことまで、昨日のことのように思い出される。
まだ付き合う前、保健室で抱きしめて貰ったときの、あのぬくもりはマジ永久保存版だ……あの時は完全に霧緒不足で、脱け殻みたいだった俺。
ぎゅうして貰った時は、嬉しくてホッとして身体が溶けてしまいそうだった。
……あの時、まだ霧緒のこと宮ノ内先輩って呼んでて、でもってキスされちゃってお口でシテ貰って……あわわ本当恥ずかしいったら……
……
「ははは……あはは」
「……はぁ……ったく、泣きながら笑うな」
「あはは……ぐす……はは……」
気がついたら涙が止まらなくて、でも両手は荷物でふさがっていてそれを拭うこともできず、流れるまま笑いながら泣いていた。
大分すれ違う人に笑われた気がする。
悲しい筈なのに、次から次へと楽しかった思い出が溢れだしてくるのだ。
胸がいっぱいになる……
そのまま宮ノ内家に向かい、玄関に入ると手にしていた荷物を霧緒に手渡した。
「おかえりー!」
「母さん、大至急タオル」
「え、何タオル?あら詩くん!あらら~顔面崩壊!ちょっと待って!」
涙と鼻水でグシャグシャになった顔を、霧緒が丁寧にフェイスタオルで拭ってくれた。
「ったく、泣きすぎたって」
「うぅ……申し訳ないぃ……」
「卒業しても家は隣なんだから、いつでも会えるだろ」
「はい、仰る……通りです……」
やんわりと抱きしめられて、興奮していた気持ちが段々落ち着いてくる。
霧緒の胸に顔を埋めてスリスリすればもっとしたくなる。あったかい……
ずっと……
ずっとくっついていたくなる……
……
そう思った瞬間に友子さんと目が合った。
ニヨニヨ顔で真っ直ぐこちらを見ているではないか。
「……詩くんって……本当可愛い……」
!!
そうだった!
友子さんが居たんだった!
慌てて霧緒から離れようとするけど、それは霧緒が許さなかった。
「あいつのことは気にするな」
「き、気にするなって言われてもっ」
「気にしちゃうわよね~!でも気にしないで!ほらあなた達は公認だから」
そう言われても気にしますーー!!
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