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第373話 卒業旅行6*

霧緒 「あれ?玲二達が気がついたらいない。はぐれたかな」 「結構人が多いからな。まぁ、後で連絡取り合えばいいだろ」 「うむ……そうですな。ふふふ……あとは若い者同士、仲良く二人の時間を堪能して欲しいですな。あっはは」 「誰だそれ?ま、俺達も二人きりなんだけど?わかってる?」 「わ、わかってるよ」 後ろを振り返りながらはぐれた他二名を気にする詩だけど、そんなに心配しなくてもいいっての。 あっちは久しぶりのデートでウキウキしてるんだから、正直友達なんて二の次だ。 この辺で別行動になるのが自然だと思う。 あんなに浮かれた宗太ほとんど見たことないしな。 車内でのあいつの屋内に対するあの態度は、突っ込みを入れたくなるくらい屋内のことを大切に扱っていて、不思議だった。 人当たりは良いくせに、自分の本命となるといた試しがなかったし。 なかなか自分の本心を見せたがらない奴だから恋人なんて作らないんだろうと……そう思っていたから以外で…… 「面白い……」 「え、何が?」 しかも俺と同じで、同性を好きになるなんて。 あいつのことだから、そんなまさか!ってかなりの葛藤があったはずだ。 だけど…… そう思いながら隣を歩いている自分の恋人を見つめた。 ……見る物全てが新鮮なのか、口を半開きにしながら、楽しそうに辺りを見渡している姿は、同性でありながら惹き付けられてしまう。 というかその口、スゲー可愛いから舐めたい。 俺は自分の気持ちに正直だから、相手が男だろうと手に入れたいって思うのに反して、あいつはなかなか受け入れないし、認められないタイプだろう。 だからその辺をどう乗り越えたのか?の、詳細は少~しだけ気になる。 少しだけ…… ま、詩の発案で折角計画立てた旅行だし、楽しんでもらいたいと思う。 「ちょ、霧緒あそこからめっちゃいい匂いがする!あの店見ようぜ!」 「はいはい」 甘い香りに誘われてたどり着いたのは焼き菓子の店。 この匂いは目の前で作られているクッキーからだった。 「わー!美味しそうー!」 「本当マジヤバい」 「1枚から買えるのかーどれがいいかしら」 「やっぱりチョコチップか……それともプレーン……」 「……バナナってのもあるよー!」 「え!何それ?美味しそう!」 「悩みますなぁ」 「悩むー!!」 「やっぱり焼きたて食べたーい!」 「……」 匂いにつられて来た他の女性客の中に違和感なく溶け込み、一緒になってどれを買うか悩んでいる詩を少し離れた場所から見守る。 ……ある意味才能だな。 知らない人と自然に話せ(特に女性)あっという間に馴染んでしまうのは、詩の柔らかい雰囲気がそうさせるのか。 相手も警戒することなく話せてしまう。 ……お前ら……あんまりくっつかないで欲しいんだけどな。 見守るこっちからしたら、イライラしっぱなしなんだけど。

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