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第377話 卒業旅行10

「ねね!大浴場とかさ露天風呂とかさぁ。皆で入らないの?」 「はーい!入りたい!」 「……」 「うーん、そうだなぁ」 貸し切りの露天風呂の予約をフロントで入れながら皆に聞いてみたけれど、返答はそれぞれで微妙な雰囲気が流れた……気がした。 特に気温がぐっと下がるようなオーラを醸してくる男が約一名。 ここの露天風呂は一番人気と言っていいくらい旅行雑誌でも評判が良い。 広いし綺麗だし、景色がよい! 夜はライトアップされて、これまたムードたっぷりで楽しめるという! 皆で入ったら絶対楽しいって思う! キラキラと期待を込めた視線を向けても、返って来るのは無言とどす黒いオーラの波。 無駄にイケメンだから威圧感が半端ない。 それを察したのか、入りたい!と賛同してくれた玲二の顔が引きつり、そのまま菊池先輩の後ろに隠れてしまった。 「……だだだ駄目……ですか」 「駄目に決まってんだろ」 「……だ、だよねー詩。諦めよう」 「んーまぁ……萩生の皆で入りたいって気持ちはわかるけどなぁ。ワイワイ楽しそうだよな。うーん、でも俺も屋内の裸は他の奴には見せなくないわーって思うから、霧緒の気持ちもわかるんだよなー」 菊池先輩がそう言うと、ぽぽぽと顔を赤くする玲二がいて、慌ててニット帽を下げて顔を隠してしまった。 やっぱり駄目だったー! 駄目だとわかっていても諦めきれなくて意を決して聞いてみたけど、彼氏の意思は固い。 「詩の気持ちはわかる!大浴場で泳ぎたい気持ちはわかるよ!」 「いや、泳ごうとは思ってないぞ玲二」 ポンポンと玲二に肩を叩かれて慰められる。 わかっているけれど、入れたらいいなぁと少しの可能性を込めて言ってみたんだけれど、やっぱり却下されてしまった。 同性同士のカップルなのでこれは仕方がない。 まぁよく考えてみれば、俺だって霧緒の裸は他の奴には見せたくないって思う。 思うけどそこまでかー?とも思ってしまったり。 他の奴からしたら同性の裸なんて、俺の裸なんてそこまで気にしないのではないか?とも思うんだけど……しかし霧緒からしたら違うようで、一歩も引かない意志の強さがオーラに現れていた。 く、黒い……真っ黒いですぞ……

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