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第387話 卒業旅行20 夕食
「詩……浴衣ってさ、着慣れないから何か落ち着かないね」
「ン、そう?」
「動くとはだけてこない?」
「まぁ、服着ているときよりはゆっくりした動きにした方が着崩れしにくい」
「う、うん」
「ついでに玲二くんの帯直してもいい?」
「え、これ駄目?」
「うん、とってもハイウエストになってって気になる。くびれのところは女の子がベストだけど、男は腰骨の上辺りがいいんだ」
「……え、詩って詳しい。何実家旅館?」
「ぜんぜーん。でも着付けはできるよ」
「え」
夕食は菊池先輩と玲二の部屋で四人で食べることになっているので、隣の部屋にお邪魔していた。
玲二の浴衣を直していると、食事の支度がどんどん整ってきていて、一気にテーブルの上が鮮やかに彩られていった。
「おおー!いい匂い」
「スゲー!美味しそう!」
菊池先輩の隣に玲二が座り、玲二の前は俺、俺の隣に霧緒という並びで賑やかな夕食が始まった。
「はーい!霧緒くん!どんどん食べてね!ご飯おかわりいる?」
「……そんなにいらねぇ……宗太そのテンションなんだよ」
「俺、おひつ担当だから皆ちゃんと米食えよ~」
「え!俺やりますやります!」
「無理でーすー!萩生、口に米ついてるぞー!ダーリンにとってもらえっ!」
「あーこのお椀美味しいですよ、菊池先輩」
「お、マジ?あ、玲二もほっぺにご飯粒つけていいからねー?俺がとってやるから」
「え!」
今回の主役の先輩におひつ係なんて!って思って立候補したらあっさりと却下されてしまい、まさかのご飯粒が頬っぺたについていたらしく、霧緒にすかさずとってもらう醜態をさらしてしまった。
「そういえば学食でもありましたよね。宮ノ内先輩が詩の頬っぺたにつけてたご飯粒食べちゃうの」
「うっ」
「あー!あったあった!あれ驚いたわー!」
「……そうだっけ?」
あった……確かにあった。
まだ新学期始まって間もない頃、玲二と学食で弁当を食べていた時だ。
カッコいいオーラを放つ霧緒が何故か俺の隣に来て、俺の頬に付いていた米粒をつまんでパクリと食べてしまったのだ。
あの時の霧緒の色気ったら半端なくて、どうしたらいいのかわからず、ただ早くこの場から立ち去ることしか考えられなくて、焦ってめっちゃ早食いしたことを思い出す。
「あ、あの時はスゲー驚いた」
「だよねー僕も驚いたよ。周りの皆に凄い見られてたしね」
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