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第416話
「孕む孕む」
「私もう孕んで、三人子供産んでるわ~」
「マジー!?それ超幸せ家族!」
……なんだその会話。
この学校の生徒だろう女子たちの会話は少しおかしい。
孕むって?妊娠するくらいイケメンだってことか?
はは……ウケる~どんだけのやつだよ。
そう内心笑っていたら………笑えなかった。
……うわっ……
これは孕むわ。
ザワツク群衆の中に、独特のオーラを纏ったイケメンがそこにいた。
イケメンだけど、イケメンの中でもエロい感じ。
チャラい系じゃなくて、クールで落ち着いた大人の雰囲気でレベルが高い。
眼鏡を掛けたそいつは、衣装なのか血糊が付いた白衣を着て颯爽と歩いていた。
颯爽というよりか、周囲について回る女子達が邪魔で、蹴散らすように早歩きしている感じだ。
……酷いイケメン。
確かにこれクラスのイケメンなら、女子たちがざわつくのもわかるし、孕むって気持ちもわかる気がした。
ん?なんだあれ……付録がついて来る。
そんなイケメンの後を、ひょこひょこと追いかける着ぐるみを着た奴がいた。
クマかと思った着ぐるみは、よく見たら柴犬みたいで、ちょっと可愛いなと思ってしまった。
何故なら俺は犬好きだからだ。
ダサいから着たくはないけど、単純に可愛い。
それに着ている奴の動きが面白くて、自然と視線がそっちに行ってしまう。
……イケメンなのに、変な奴引きつれてるんだなぁ。
「やだぁ!あれ詩くんじゃない?可愛い~!!」
「さっきメイド服着てたのに、今度は着ぐるみって可愛すぎ!」
「詩く~~~~ん!!」
着ぐるみの奴、ウタって言うのか?
……そう呼ばれた着ぐるみの奴は、被っていたフードを下ろして、ピースサインをしていた。
……
ほわっとした雰囲気の奴で、男だった。
メイド服っていうから、先入観で勝手に女子をイメージしていた。
そういや、くん付けで呼ばれてたな。
カッコいいというよりは、女子達が言う通り可愛い部類だけど、こちらもイケメン男子だ。
下ろしたフードを、隣のイケメンに速攻直され顔は半分以上見えなくなってしまったけど、それでも女子たちは楽しそうに二人を取り巻いていた。
少しだけ覗く口元が、少し尖ってまた笑顔に変わるのが見えた。
……
…………
「詩くんって可愛いよね。癒されるー!二年になったら同じクラスになりたいな!」
「だよねー!でも……宮ノ内先輩が来年いないの超寂しいんだけどー!」
そんな会話が聞こえてきた。
……あ、あいつ一年なのか。
なんだろう。
一瞬見えた表情に、胸の一部がきゅっとした。
「ビビったー。スゲーイケメン通ったな。あれは一生女には困らない感じだな」
「うん………」
「あれ?自信無くした?我が校のイケメン篠島夜壱 」
「え、全然。あれは論外だろ」
「はは!よっちゃんっぽい!」
「……ふーん……これって……一目惚れって奴かな?」
「え?何何?」
「ん、何でも。潤、もう飽きたから帰ろうぜ」
「えーー!もう!?早くね!」
志望校を選ぶ決めてなんて、人それぞれだ。
俺の決め手は、かなりいい加減かもしれない。
だけど、今の俺に動機はこれで十分だった。
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