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第420話
そうだ。
俺に告白してくれるのは嬉しいけど、でもそれに応えてあげることはできない。
断った時の女の子の傷つく顔がとっても苦手だったりする。
ほとんどの子が笑顔で諦めてくれるけど、心はきっと違うはずだ。
ごめんなさいって言うしかない。
「あ、そういえば。新入生でさ、結構ポイント高い奴がいるって女子が騒いでたよ」
「おー!マジで!?どんな奴だろう!」
「いないかなぁ~。ちょっと一年生に見えないって言ってたけど……」
二人で込み合う学食の中をキョロキョロと見渡してみるけど、それらしいイケメンは見つからない。
昼休みだからと言って、そいつが学食にいるとは限らないもんな。
そう思いながら、諦めて付け合わせの白菜の浅漬けをパクりと口に放り込み、目の前の玲二の顔を見た。
玲二が観察するように、確認するようにじっと何かを見ている。
?
見ている先に俺も視線を送った。
……そいつはトレイを持ち、ゆっくりとこちらに向かって来る。
周囲を全く気にしていないようで、俺たちの視線にも気がつかない様子だ。
黒髪は癖っ毛なのかフワリとカールしていて柔らかそうだ。それに覆われた顔は整っていて、モテそうだなって思った。
彼はそのまま、俺の席の一つ隣の席に静かに腰かけ、喉が渇いていたのか、コップを手にしてごくごくと水を飲んだ……
その時、横にそれた彼の視線と目が合った。
おぉ~。コップを飲む横顔もイケメンだな~。そう思った瞬間……
「ぶーーーーーーーっ!!!!」
びゃっ!!!
………何故か俺は、顔面にほとばしる水しぶきを浴びていた。
俺も良く噴く子だけど、噴かれたのは初めてかも知れない。
顔が髪が?色々びしょびしょになった。
「げほっ!げほっ!す!すみませんっ!!」
「だ、大丈夫~。冷たいけど……」
「僕タオル借りてくるね!」
玲二が慌てて席を立ち、学食のおばちゃんの元へ。
「ま、まさか……!となとな隣にっ!萩生先輩がいたなんて!夢にも思わなくてっ!」
「……ん?え、俺のこと知ってるの?」
「っ!!!!」
何……そのしまった!って顔。
先ほどの彼の雰囲気が一変し、顔が赤くなっててとても動揺してるみたいだ。
しかし、赤くなってもカッコ良さは変わりない。
玲二が借りてきてくれたタオルで、濡れた箇所を拭いたけど、湿ったワイシャツは風邪を引いてしまいそうに冷たかった。
「はっくしゅっ!」
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