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第423話
夜壱
学校見学を兼ねて行った学園祭で、柴犬の着ぐるみを着た先輩のことが気になったのは確かだ。
本当に、ただ気になっただけ。
それを理由に、志望校を決めこの学校に進学した。
当然こんないい加減な理由は親には秘密だけど、この学校は評判いいし、家からも割と近いから親も喜んでくれた。
お金のことを聞いたら、そんな心配はするなって……
仲のいい友達も一緒だし、この学校を選択して後悔はない。
後悔はないけど、実際この学校に通うことになるまでの間、思いの外あの先輩のことが気になって仕方がないことに気がついた。
……学園祭以来、見ない存在なのに。
見かけてはいないけど、思い返したことは多々あった。
ひょこっと歩く姿、フードを下ろした時の顔や表情、ダサい着ぐるみ。それが脳内でリピートだ。
だけど、一緒にいたイケメンの先輩と仲が良いんだろうなぁ~とか、仲が良いのは部活が同じだから?中学が同じとか?あ、同学年の兄弟がいてその繋がりとか?
そんなことも考えたり。
人気そうだったから、きっと友達も沢山いるんだろうな……とか。
同じ学校になったら、俺もその輪の中に加われる可能性があるかもしれない。
そんなことまで考えた。
あれ?
……なーんか俺、危ないか?
言っとくけど、別にストーカーとかそんなんじゃないからな。
ただ気になるだけだし、男女関係なら一目惚れってことになるかもしれないけど!
先輩は男で、俺も男だ。
この想いを自己分析するなら、きっとこれは憧れなんだろう。
俺は萩生先輩に憧れている。
……
その先輩……萩生先輩と今日話してしまった。
あー!
印象は最悪過ぎてマジで凹むけど、名前覚えてもらえたし!
声かけて良いっ言ってたから、めげずに明日挨拶してみようかな!
よし!
積極的にアピールするのが大事だ!
頑張るぞ!
そして……先輩と仲良くなって、メッセージのフレンドになれたら最高っ!
……
だけど次の日、萩生先輩に会うことは出来なかった。
どうやら……学校を休んだらしい……
……ま、まさかっ!!
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