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第430話
夜壱
「へー、二年の萩生先輩?よっちゃん何で知り合い?え、何で?」
「…………」
「…………何教えてくれないの?え、この間は何?よっちゃーん?」
「……煩いなぁ。ちょっとこの前知り合ったんだよ」
「この前って?」
「潤が休んだ日」
「ふーん、よっちゃん凄く嬉しそう。顔がニヤけてるよー。そんな顔してるから、てっきり可愛い女子から告られたのかと思ったけど、違うんだー」
「そんなんじゃないよ」
潤、榎並潤 は、中学が同じで同じバレー部。
しっかりしていて女子が好き。
彼女が欲しいけど、なかなか出来ないのは押しが強いからだと密かに思っていたり。
そんな潤には男の先輩なんて眼中にないだろう。
ましてや萩生先輩は、同じ部活でもない先輩だから、潤が不思議に思うのもわかる。
もう隠しても仕方ないし、放課後に体育館に向かいながら、学園祭で見かけたことを簡単に説明した。
「あーあの時のイケメン……と一緒にいた先輩か」
「そう。あの時に面白そうな奴いるなーと思った訳。それだけ。で、潤が休んだ日の学食で見かけて声かけたの」
「ふーんそうなんだ。俺はどちらかというと、あのイケメンの方が気になるけどな~。あ、でももう卒業していないのか」
言われみれば確かにあのイケメンも気になる。
完全に仕上がった美形で、スゲーカッコ良かったしエロい感じもした。
もっとちゃんとそいつを見ておけば良かったなぁと、今になって後悔している自分がいる。
だけど、男でも憧れるだろうイケメン……よりも、俺は一緒にいた萩生先輩の方に惹かれたんだ。
なんでだろう……
やっぱり犬の着ぐるみ着てたからなかぁ。
あのイケメン先輩と萩生先輩って、今も仲が良いのかな。
二人が仲良しなイメージが浮かんでこないけど、実際はどうなんだろう。……うう……気になる。
だけど、俺だってカッコいいって言われるし。
女子からの好意的な視線とか、噂されていることは知っているし、アプローチしてくる子も何人かいる。
我ながら親の良いところをもらったイイ顔してると、鏡を見て思う。
モテることは嫌ではないけど、あんまりぐいぐいこられると、どう対処したらいいのか分からなくなる。
気にしなければいいし、普通にしてれば良いんだけど、謎にプレッシャーかかってしまう自分がいた。
カッコいい自分でいないとって思ってしまい、いちいち焦る。
イケメンとかカッコいいって言われるのは素直に嬉しいけど、中身は至って普通の俺なんですよ。
だけど!あのイケメンに負けないくらい俺だってカッコいいんだぞ!って思う。
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