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第432話
そんなある日のこと。
「詩くんって、一年の篠島くんと仲いいよね?」
「え、うん?」
「あのさ、ちょっと相談があるんだけど、聞いてくれる?」
「へ?」
クラスの女子からそう言われて、休み時間に強引に腕を引っ張られて、何故か教室の隅っこに移動させられた。
第一印象大人しいと思っていたクラスの女子だけど、引っ張る力は意外と強く結構痛い。
「今度のテストが終わったらなんだけど、皆でデェズニーランドに行かない?」
「え」
「女子三人と男子三人で行きたいねって話してるんだけど、友達が篠島くんのこと気になってるんだって。それで仲良い詩くんに協力してもらえないかな~って。篠島くん誘ってもらえないかな~……駄目?」
「ほー篠島かぁ。えーと……うん。聞いてみないと分からないけど……」
「お願い!篠島くんに聞いてみて!あ、気になってるとかそういうの篠島くんには内緒でお願いね!男子あと一人は任せるから!あ、あ、できれば、イケメンで!」
……任せると言いながら、しっかり要望してるところはさすが女子。
デェズニーランドとは、あの夢の国と名高いテーマパークだ。
いつか行ってみたいなぁと思うけど、なかなかどうして今回はハードルが高そう。
聞いてみないと……って言うのは、篠島じゃぁ御座いませんよ女子よ……
篠島よりも遥かにハードル高めの、あの人に聞いてみないと分からない。
「分かったけど、もし駄目な時はゴメン」
「うん、是非ぜひお願い!」
そっかー篠島ってやっぱり人気あるんだな~と思いつつ、協力できるならしてあげたいと思った。
もしかしたらお互い気に入ってイイ感じになるかもしれない!
篠島とはメッセージでやり取りをしていて、色んな出来事を報告してくれる可愛い後輩って感じだ。
見た目は俺よりも大人っぽい印象だけど、中身は普通の男の子っていう感じで、内容も今日はこれ食べました~とか、テスト勉強のこととか何気ない内容ばかり。
だけど、そんなメッセージ交換はほんわかしていて俺は楽しい。
こんな俺を先輩先輩言って慕ってくれるなんて、可愛いよなぁ~~。って思うわけですよ。
「篠島には聞いてみるとして、あと一人はやっぱり……」
愛しの玲二くんか……なぁ……
「俺でしょ」
?
後ろからそんな声が聞こえてきたので、振り返ると、そこには仲島七空 が前髪をサラサラと(サラサラしてないけど)弄りながら佇んでいた。
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