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第435話
ちょっかい出された方が何倍も気が楽なんだけどなぁ。
ほあっと湯気が立ち上るカフェオレをじっと見つめ、小さく溜息をついた。
右側から感じる視線が妙に甘く感じるのは、この飲み物のせいかもしれない。
長い脚を組んでいるのが、視界の端っこに見えた。
座った時に霧緒は、ソファーの背もたれに肘をついてリラックスした姿勢だったから、そのままの体勢で俺を見ているんだと予想する。
そんな状態の彼は絶対にカッコいいから逆に見れない!目がハートになる自信があるんだ!
意識しなかったら気にならないんだけど、見られていると思うと、どうにも視線を彼に向けて、見つめるなんてできないと思ってしまうのだ。
何回も言ってると思うけど、俺の彼は無駄に顔がいいイケメンだ。
しかも当人も自覚済みであって、たまにそれを武器に俺を動揺させて反応を楽しむ……
うええ~!それってなんていう悪趣味!
そう思うのに既にドキドキしている俺がいるし、俺カフェオレ啜ってばっかりだしー!
「詩」
「お、おう」
組んだままの脚で、俺の脚にこつんと触れて来て心臓が跳ねるのがわかった。
「カフェオレもうなくなったんじゃねーの」
「……あ、はい。ご馳走様でした」
「うん」
バレてたって思いつつ、空になったマグカップを目の前のテーブルにそっと置き、ついに心の支えを失ってしまった。
仕方なくというか、空いた右手を霧緒の膝に置いて意味もなく撫でる。
それでも顔を見るのは恥ずかしく、もういいや!って気持ちで身体をそのまま横に倒し、霧緒にもたれさせた。
あ、エロいい匂い……そう思った時には、俺は彼の胸にすりすりと頬ずりをしていて、恥ずかしいというよりも、幸せのいっぱいの気持が心を占めていて、俺って本当調子いい奴だって思う。
「……そうきたか」
「へへへ……」
ふわりと頭を撫でられて、優しく抱きしめられて満足していると、強引に顔をあげられ、すかさず唇を塞がれた。
触れるだけだけのキス……からの、大人なキスだ。
舌を舐められ、舌を絡められて頬を撫でられて、体温が一気に上昇するのがわかった。
霧緒は珈琲をブラックで飲んでいたから少し苦みのあるキスだけど、気持ち良くて離れるときに未練がましくぺろりと霧緒の下唇を舐めてしまう。
「……」
「……」
それが終わってようやく彼の顔を見ることができた。
……やだ、カッコいい。エッロ……えっろ~。
「はぁーースッゲーしたい……」
「へ?」
「したいけど、テストまで一週間切ってんだよな……くそ……」
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