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第444話
夜壱
夢の国って、普段出来ないことができちゃうんだなぁ。
腕の中で慌てる萩生先輩が無性にいとおしく思えて、やたら暴れてるけど、無視して背負ってるリュックごと抱きしめた。
……やっぱり先輩って、年下の俺より身体細い。
肩は薄いし首も細いから男の中だと華奢だ。
そう思いながら先輩の首筋を眺めた。
「ちょっ!篠島っマジやめろって!」
「……あ」
萩生先輩の焦る声で我に返ると、腕を払いのけられてしまった。
あ、あれ?
「こ、こういうの!俺あんまり好きじゃないから!わ!わかったか!」
「そうだぞ篠島~!自分がイケメンだからってな!こういうことすると萩生は怒るぞ。こいつ恐いんだからな~!」
「ご、ごめんなさい!俺……つい……ってあの萩生先輩首のところ虫さされてますよ……」
「………へ?どこ?」
……ン?でもあれって……
シャツから覗く白い首筋に小さな赤い内出血の後……
「それって、もしかしてキスマークっすか?」
本気とも冗談ともない言葉がうっかり口から出てしまった。
だけど言った瞬間、バっと両手で首を押さえ目が点になった萩生先輩がいて、しかも見る見る顔が赤くなっていくではないか。
え、え……
「えーと、か、か、か、蚊ーー!に刺されたかな!刺された刺された!」
は?そのリアクション絶対嘘だろ!
そわそわと、外していたシャツの第一ボタンを留めている萩生先輩は、明らかに動揺していて、あらぬ方を見てパチパチ瞬きばかりしている。
俺の頭は真っ白になった。
ちょっと……それってどういう……
それってキスマークってこと?マジで?
萩生先輩の首筋に?
ズシ……
心臓が急に重くなる。
え、付き合ってる人がいるのか。
「ごめん!お待たせー!うわ~もう暗くなって来たね~」
「ライトアップするとまた違う雰囲気になるよね綺麗~」
「篠島くんは何か買った~?」
買い物が済んだ女子が合流したお陰で、会話はそれで終わってしまったけど、俺の頭の中は先輩の首筋が張り付いて離れなかった。
キスマークなんて、萩生先輩のイメージからかけ離れてて意味分かんないんだけど。
だけど……
もし、本当にキスマークだったとしたら……
え、それって先輩もエロいこと……してるってことだよな?
え、え……あんな無邪気な癒し系の萩生先輩が、セ、セックス……したりしてるのか?
え、え、え?
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