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第447話
夜壱
「…………そっすか。今日出掛けるのって彼女的に大丈夫なんですか?怒られたりとか……」
「それは前から言ってあるから大丈夫。俺、こんな人数で出掛けるの初めてだから単純に行きたいなーって思って。友達皆でワイワイ出掛けたら絶対楽しいじゃん!いいな~って思ったから、思いきってお願いしたんだ」
困ったように笑う先輩の笑顔が、ヤバいくらい可愛くて、また抱きしめたい衝動に駆られた。
……わかった。
これって、この気持ちは俺のワガママだ。
萩生先輩は皆の癒しの先輩だって思っていたけど、それは嘘で本当は自分が独占したかっただけだ。
学園祭から気になっていた憧れの先輩に近づきたくて、話がしたくて、メッセージ交換して、常に関わっていたかった。
それで先輩からもっと必要とされる一人になれたらいいなって。おこがましくも特別な存在になれたらなって。
「へぇ……優しいんですね。俺なら行かせないですよ」
「え」
「俺、萩生先輩のこと好きだから、もしも恋人だったら心配で一緒について行っちゃうかもしれないです。あ、それと彼女いるのは嘘なんで気にしないで下さい。ちょっと疲れてバカな嘘つきました。すみません」
「は?え、嘘?そうなの?」
「先輩、帰りましょう」
そうか、俺は萩生先輩のことが好きなんだ。
シンプルに考えたら妙に納得した。
先輩のほわっとした雰囲気とか、話し方、歩き方も好みだし、くりっとした瞳もお気に入りだ。
「先輩がつき合ってる子ってどんな子ですか?教えて下さいよ。スゲー興味あります」
「えーどんな子って言われても……あんまり皆に知られないようにしてるから……こ、困ったなぁ」
二人で並んで歩きながら最寄り駅を目指す。
うんうん言いながら困り果てている先輩だけど、遠慮なんかしないって思った。
「今日のメンバーにはいないですよね?」
「え!いない、いないよ」
「じゃ、学校の奴ですか?」
「…………も、もういない……けど……」
……
……年上か!!
「年上の彼女かぁ……先輩って年上から可愛がられそうですもんね。どんな感じの人ですか?可愛い系美人系?」
「ちょっと篠島!聞きすぎだろ!どうしたんだよ急に~!」
「だって萩生先輩に彼女いるとか寝耳に水で、教えてくれたら良かったのに、そんなことないし、それでちょっとムカついて。俺、先輩に憧れてるから、先輩のことは何でも知りたいんですよ。秘密なら絶対守るし、だから教えて下さい」
「えー!」
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