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第452話 *

霧緒 …… あいつ今日は友達と出掛ける予定になっていたから、一日中テーマパークで遊びまくっていただろうな。 知らない誰かと楽しそうに過ごしているんだろうと思うと、面白くないしムカつくし頭にくる。 例えそれがただの友達だとしてもだ。 今回それを許してしまったことを、何度も後悔したけど、詩のお願いは叶えてあげたいと思った。 実家から離れて椿家に暮らす詩は高校生活二年目に入る。 そんな詩にとって学校の友達はとても大切だ。 新しいクラスになって、新しい友達もできるかも知れないという時に、水を差すようなことは出来なかった。 ……俺って、大人になったよな…… あ~~大人だな。 自分の事だけ考えて来た俺が、こんなこと考え出来るようになったんだぜ。 出来るようになったけど、気持ちとしては全然許せるものではなくて、モヤモヤイライラしっぱなしだった。 今日は一ミリも笑っていないし、バイトに来てからもキリキリしながら接客をしていた。 昨日はそんな不満を募らせたまま詩を抱いたし、ワザとキスマークも見えるところにつけてやった。 勿論本人が気がつかない個所にだ。 気持ち良くなってる最中だと、あいつは余裕ないから容易くつけられる。 ……何事も無ければいいけど…… あのほんわか星人は、意外と予期せぬ問題を引きつれてくるから気が抜けない。 ……前科あるしな。 もう少し人を疑うとか、警戒するとかして欲しいんだけど、どうもその辺のネジは緩んでいるみたいで期待できない。 まぁ、中身が俺みたいな人間だったら、好きになんてなってないんだけど。 そんなことを考えながらカップを片付けていると、 カララーン 扉が開く音が聞こえ、 「こんばんは~」 キョロキョロと店内を見渡している詩の姿があった。 「お、宮ノ内くんの後輩く~ん」 「あ、こんばんは~。席開いてますか?」 「空いてるよ。そこのカウンターでいいかな?」 「はい!」 マスターと話をしながら、背負っているリュックを足元の籠に入れ、空いているカウンターへと腰かけた。 「予定より早かったな」 「うん、早めの電車に乗れた。何か食べてもいい?お腹空いた~~」 「ほら」 詩にメニューを渡しながら、はぁ~~とため息をつく緩んだ姿をじっと見た。 「楽しかったか?」 「ん!楽しかった」 「そか」 「フルーツサンドとカフェオレはアイスで~」 「かしこまりました」 詩の注文を取っていると、一人客が入って来た。 待ち合わせているのか、そいつは店内を見渡し真っすぐと歩いてやって来る。 「いらっしゃいませ」 …………あ? そいつは何故か、詩の隣の席へと腰かけたではないか。 ……誰だ?こいつ…… 詩はぼーっとまだメニュー眺めていて気がついていないようだったけど、そいつは明らかに詩を意識して、そこへ座ったように見えた。 隣に誰か来たので、自分の荷物が入った籠を自分の方へ寄せた時に、詩がチラリと隣の人物を確認した…… ……あーなんだ……あいつの顔。 詩のくりっとした瞳が、バグったように停止していた。

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