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第454話

カウンターだから会話は全て筒抜けで、誤魔化しなんか効かない。 その証拠に、さっきから黒いオーラがまるで妖気のように彼から漂っている。 ちなみにこのオーラは、霧緒に近しい一部の関係者にしか見えない特殊なオーラだ!酷く寒くてピリピリするぞ! 詩よ!気を確かに持つんだ! とりあえず、カフェオレ飲んで落ち着こう! 目の前に置かれたカフェオレにシロップを入れ、ストローですすって飲むと、ほろ甘い味が口の中に広がる。 「はぁ……」 だけど、その味を存分に堪能できない。 「篠島……あのさぁ、俺本当困るんだよ……」 「……」 「今日のことは篠島に謝るから……あ!後日何か奢るとか!そんなのでどうかな?」 「……謝ってもらいたい訳じゃないからいいです。奢ってもらうのもいいんで。だけど今度二人で飯食いに行けるならそれでもいいかなぁ~」 「マジで!?じゃ、行こう行こう!」 「でも折角ここまで来たから、ちょっとでも見たいな。そんなに人見知りちゃんなんですか彼女?」 「え!あ、あぁ~~と、そ、そうです。そうなんです本当そうなんです!」 「ふーーーん」 だから、早く帰って! そう思うのに、篠島は気だるそうに俺の顔を覗いたり、誰か入ってこないか入り口を伺ったりしている。 「コーラフロート、お待たせしました」 注文した飲み物が置かれた時、篠島が店員の顔を何気なく見た。 「……あれ?…………あっ!」 え、何? 「去年、日ノ原高の学園祭で見たことある人!」 飲み物を置いたのは勿論霧緒で、まさか霧緒のことを知ってるとはうっかり予想してなくて、息が止まりそうだった。 そっか!学園祭に来ていたんだから、目立つ霧緒を覚えていても不思議じゃない。 「あの!去年の学園祭、萩生先輩と一緒にいましたよね。うわーー!」 「…………どうも」 霧緒が篠島に小さく挨拶をした。 ちょっと……うっすら笑ってます? わ、笑ってますよね? いつもと明らかに態度が違う恋人の姿を直視出来なくて、食欲はないのにフルーツサンドにかぶりついた。 フルーツサンドに癒してもらおう! もしかしたらこのフルーツサンドが俺のこと助けてくれるかも知れない!味わからないけど! 「俺、一年の篠島っていいます。萩生先輩には色々仲良くさせてもらってて」 「今日、一緒だった?」 「はい!皆でデェズニーランドに行って来ました!」 「そう」

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