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第457話

霧緒の胸の鼓動が聞こえてくる。 それにあったかくて、つい気持ちが緩んでしまいそうになった。 「あっ!じゃあ、萩生先輩についてたキスマーク!つけたの宮ノ内先輩ですか!!」 「ぎゃーーーーーーっ!!」 「当たり前だろ」 恥ずかしくて、霧緒の胸に埋めていた顔を上げて絶叫する! 煩いと言わんばかりに、霧緒の手に口を塞がれてフガフガ籠るだけになってしまい、そのままの状態で篠島とは別れた。 夜道に人がほとんどいなくて助かった。 「ふがふが……ふがふが」 「……」 肩に腕を回され、手のひらで口を塞がれた状態のまま夜道を歩いたけど、暫くするとその手の力が緩められた。 「は、はぁ~~~」 「……」 「……ご、ごめん!」 「……」 「もう、色々!……ごめんなさい」 「誰だよ、あいつは」 「篠島っていって一年なんだけど」 「なんで一年が今日のメンバーにいるんだよ」 「篠島目当ての子がいて、誘って欲しいって言われて声かけたんだ。俺、篠島とは割りと仲いいから……。あ、仲いいって普通に後輩としてだよ!」 「……向こうはそんな感じじゃなかったけど。お前のこと気になって仕方がないって感じだったじゃないか」 「え、そんなこと!」 「そんなこと、あるんだよ。興味もない奴に普通こんな時間までくっついて来ないだろ。ったく……もっと警戒心持てよ」 「……そんなこと言われても。そもそも!原因は霧緒がつけたキスマークだからな。これ、見られて凄い質問攻めされたんだから」 「……へぇ……何だよ。じゃあキスマークつけた俺が悪いのかよ」 「悪いとか!そ、そうじゃなくて……」 やばい、二人の空気が重くなってきた。 警戒心持てなんて言われて、俺も何か頭にきてるしイラついてる。 警戒心ってなんだよ。誰に警戒しろって言うんだよ。 それに篠島が俺に気があるみたいなこと言ってくるのも頭にくる……。 篠島とはまだ知り合ったばかりだし、一緒に出掛けたのだって、今回が初めてなんだからな。 「はぁ……こんなことになるのが嫌だったから、行かせたくなかったんだよ」 「…………」 「報告することもあるのにこんなんじゃ……」 「…………こんなことってなんだよ。こんなことって」

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