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第464話

友子さんとリビングで話をしていると、誰か帰って来た気配がした。 ……誰かって、まぁ分かってるんだけどさ。 「おかえり~!」 「……おか、おか……えりぃ…………」 「…………ただいま」 帰宅した霧緒は、チラリと俺の方を見ただけで直ぐリビングを出て二階へと行ってしまう。 「あ!」 慌てて霧緒の後を追いかけて、階段を上がる霧緒のシャツをむんずと掴んだ。 「ちょっ!ちょっと待った!」 「は?」 「待った!待って!待ってくださいっ!」 「…………あのなぁ」 「…………行ったら俺……泣きそう」 「……」 「……」 「荷物置きに行くだけだって……って……もう泣いてんじゃん」 「……」 「ったく……」 ため息を吐かれ、それと共に引っ張っていたシャツが緩み、頭を優しく撫でられた。 それだけなのに、待てを解かれた犬みたく、霧緒に飛びつき、思い切りぎゅっと抱きしめる。 「ごめん!ごめん!ごめんーーーー!!」 「わ、分かった、分かったから苦しいって。マジで苦しいから」 逃してたまるかという思いとともに、その勢いで謝る。 気まずいのは嫌だし、反省してるし! ぎゅっと抱き着くと、霧緒の何とも言えない良い匂いが鼻孔を擽り、嬉しいし気持ちが緩んでしまう。 「はいはい、君たち面倒だからさっさと仲直りして頂戴ね。あ、私散歩がてら買い物に行ってくるから、帰るまでにちゃんと話しておきなさいね」 「……」 「え、友子さん一人で大丈夫?」 「ありがとう全然平気よ。長時間じゃないし、買い物も近所のスーパーだから。あ、霧緒。あの話、私話しちゃったからね~!話してないなんて聞いてなかったし!」 「!」 「それじゃ、お留守番よろしくね!行ってきまーす」 そう言いながら、カーディガンを羽織った友子さんはバッグ片手に素早く出掛けて行ってしまった。 バタンとドアが閉まる音だけが、家の中に響く。 俺は霧緒に抱き着いたまま、友子さんが出て行った玄関を暫くぼーっと眺めていたけど、頭をポンポンとたたかれて我に返った。 「あ」 「……」 「あの」 「昨日は俺も悪かった……言い過ぎた」 「あう……」 「ごめん」 「……」

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