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第471話
夜壱
萩生先輩とデェズニーランドに出掛けたあの日。
萩生先輩の事をもっと知りたくて、迷惑をかけていると知りながら、駅で別れた後、先輩を尾行するという卑劣な手段をとってしまった。
萩生先輩の彼女がどんな子が知りたくて、コッソリ後を追ったんだ。
ほんわかした性格の萩生先輩の首には、熱烈なキスマークがついていて、それがやけにリアルだった。
だけど現実に受け入れられずにいて……というか、俺は完全に相手に嫉妬したんだと思う。
今考えてみるとよくわかる。
俺は萩生先輩のことが好きだったんだ。
あの頃……先輩を学園祭ではじめて見かけたあの時から好きだった。
それを憧れという言葉にすり替えて先輩を近くで見ていた。
そして、萩生先輩の後を追った喫茶店にお目当ての奴はいた。
ぶっちゃけ、彼女じゃなかった。
先輩が俺に教えたくない理由が分かって、マジで悪いことをしたと思ったし謝ったし。
まさか、彼女じゃなくて彼氏だったとは夢にも思わず。
だって普通思わないだろ?
男が男とつき合ってるなんて、咄嗟に分からなくて、うちに帰ってからじわじわ理解したよ。
萩生先輩のあの慌てた態度、それを気にすることなく抱きしめ腕の中に包み込んでいたあいつ。
いまでも思い出すとムカムカしてくる。
思い切り牽制してたし、二人で飯に行くもの断られて、今も萩生先輩とはデートできずにいた。
喫茶店でバイトしていた萩生先輩の彼氏、宮ノ内って奴は、うちの高校の卒業生だからまぁ先輩にあたるんだけど、本当にムカツク奴だって思う。
ムカツク理由はそいつの容姿も関係していて、それはそれはいい男なんだ。
俺もモテるけど、あっちもそれはそれはモテるだろう。
美形っていうのか、体型も背が高くてモデル体型だし、クールな印象がまた人の視線を惹きつける。
そして何かエロい。
何を考えているのか分からない無機質な瞳は色気があって、男の俺でもちょっとドキっとしてしまうくらいだ。
それがまたムカツクーー!
俺がドキドキしてどうするんだよ!
「えっと、あの……篠島にどう見えたかわからないけど、俺……あいつと付き合ってるんだ」
数日後、困ったような恥ずかしいような顔をした萩生先輩は、俺にそう説明した。
赤い顔をした先輩も可愛いと思ってしまった俺がいる。
「この数日で気がついたんですけど、俺、萩生先輩の事好きみたいです」
「え」
「あ、好きって言うのは、友達の好きじゃなくて恋人としての好きです」
「……」
「……」
「ええええええ!!!!??嘘っ!!」
え、そんなに驚くか?
俺もこの気持ちには気がつかなかったけど、それよりも萩生先輩と知り合って友達になってから、そういう意識を微塵もさせることができていなかったという事実が地味にショックだ。
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