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第472話
夜壱
……自信なくすんですけど。
俺だって、俺だって!カッコいいと思うんだけど。先輩が異性ではなく、同性を好きだと言うなら少しでも意識して貰えたら嬉しいのに。
俺じゃダメなのか……
あんな彼氏がいるのに、萩生先輩には効果はない……?というか効かないのか。
あれレベルじゃないと無理なのか?
………くそう。
「嘘じゃないです。萩生先輩の事好きです」
「…………そ、そうか。ごめん。俺、篠島の事はいい友達だと思ってる」
「はい。今はそれでいいです。あ、でも振り向かせる努力はします!頑張ります!」
「えー多分無理だよ」
「何でですか!」
「だって篠島って男じゃん。俺、そもそも……ゲイって言うの?じゃないし」
「は?」
「多分、霧緒以外は受け付けないと思うんだよね。他の奴とって思うと全然考えられないんだよなぁ」
あははって照れながら微笑む萩生先輩は、相変わらずほんわかした雰囲気をまとっているけど、口調はしっかりとしていた。
「そういうことだから、もし篠島が俺と友達として付き合ってくれるなら俺は嬉しい。じゃないなら悪いけど無理かな。霧緒に無駄な心配させたくないし。ああ見えて結構心配性だから。それに俺があいつ以外に靡くことはないと思うから」
「……先輩」
今、フラれた筈なのに先輩のことが更に好きになる自分がいた。なにそのセリフ、ムカつくけど可愛いんだけど。友達として(隙あらば絶対意識させてやる!)でもいいから先輩の近くにいたいと思った。
変だな……まだ先輩と話すようになって数ヶ月なのにこんな風に考えてしまうなんて。
人を好きになるって、スゲー不思議だ。
それだけでもっとカッコ良くなりたいとか、大人になりたいって、頼られる人間になりたいって思ってしまう。
……ただ俺が単純なだけかもしれないけど。
あぁ……チャンスがあるなら狙いたい。先輩の近くにいつもいたいし、構いたいし触れたい。
先輩に気づかれないように密かに決意した。
打倒、宮ノ内だ!
そして、萩生先輩に告白してフラれた数日後、俺の足はあの喫茶店へと向かっていた。
カフェTsukishiroへ。
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