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第473話
夜壱
心の中では宮ノ内先輩と言わず、敢えて宮ノ内と呼び捨てにする。そうする事で己のライバル心を掻き立てた。
……と、年上だから面と向かって呼び捨てできないけど……
宮ノ内はシフトは夜に入れてると萩生先輩からそれとなく情報を得ていたので、暗くなってから喫茶店に行ってみると、予想通り宮ノ内は出勤していた。
……うわ……
……クソ~!
横顔までもイケメンとは、ムカつく奴だ。
カウンターにいた宮ノ内は、入って来た俺に気がつくと、無表情のまま「いらっしゃいませ」と会釈した。
この時間、店内の客は疎らで空いているみたいだ。
「こんばんは」
「……カウンターでいいか?」
「はい。ブ、ブレンド下さい」
「畏まりました」
宮ノ内は、注文をとると慣れた手付きで珈琲を入れはじめる。
ついブレンドって言ったけど、珈琲はあまり飲まない。つか飲まない。
カッコつけて頼んでしまったんだけど、飲めるかどうか不安だった。
えーと、あの入れ方ってドリップって言うんだっけ?わっかんねー。
高校1年の俺と、大学生の宮ノ内……
男としてのレベルは雲泥の差がある気がする。
実際珈琲を入れる宮ノ内は、絵になるくらいカッコ良くて、目が離せなかった。
「先日はしつこくして、どうもすみませんでした」
「……」
「で、俺我慢できなくて、萩生先輩に告白したんですよ」
……そう言うと、ピクリと反応し、俺におっかない視線を向けてきた。
うわっ恐っ!
「そ、そんな睨まないで下さい。バッサリフラれたんで。無理ってハッキリ言われました」
「当たり前だ」
「……あの~……萩生先輩ってめんくいですか?宮ノ内さんクラスのイケメンじゃないと靡かないんですかね」
「……さぁな。ブレンドお待たせしました」
「……あざーす。本当ムカつくくらいイケメンなんだからなぁ……あ、でも一応友達として萩生先輩と付き合ってもらえることになったんで、その報告です」
「そんなんでいちいちここに来るなよ」
「だって俺が萩生先輩の事を好きだって自覚したきっかけは、宮ノ内さんですもん。誰かに言いたいけど、喋れないし。だから敗者の愚痴くらい聞いて貰おうと思って。恋人は今は諦めましたー」
「……」
恐る恐る熱々の珈琲を啜ってみると、口の中に苦い味が広がる。
だけど嫌な苦さではなかったのでホッとした。
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