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第482話

「……それならいいんだけど。ちゃんと全部食べてよ?じゃないとこのプリンをあーーんさせてやるからな!」 「あーーんの刑?」 「そう!あーーんの刑」 「残した方があーーんしてもらえるなら、残した方がいいんじゃね?」 「……ん?えと、いや、全部食べてもあーーんの刑だ」 「……何それ」 「い、いいから!ちゃんとご飯食べてねってこと!」 「うん食べる。つか食べてるから~」 玲二がぷんぷん怒るから、弁当を食べるのに集中する。 確かに最近忙しいせいか、食欲がいまいちなんだけど、そういうの誰だってあるよね。 少し食べると、お腹がそれで満足してしまう。 だけど弁当箱を覗くと、まだおかずが半分残っていてどうしようって思う。 「ほらほら!お箸が止まってますよー?宮ノ内先輩、来月帰って来るんだろ?それまでにちゃんと食べないと具合悪くなっちゃうぞ!」 「止まってません~!休憩してただけですー!ちゃんと食べてますー!」 「ブロッコリー食べてやって!」 「……はいはい」 ため息をつきながら、マヨネーズがついた緑の野菜を口に放り込んだ。 もぐもぐ。 うーーん、このブロッコリーあんまり美味しくないなぁ。 でもそんなこと言ったら、また玲二に何か言われそうだから黙って食べる。 時間はかかったけど、何とか弁当を完食させて玲二のプリンも一口貰って食べた。 勿論あーーんの刑だ。 「……うん、美味しい」 「そっか。よしよし」 「玲二くん、ちょっとうちのねーちゃんみたいになってきたぞ」 「へー優しいお姉さん?」 「……やさ…………いえ、そこはノーコメントでお願いします」 「なんでだよ!」 プンプンと怒ってみせる玲二は、直ぐに意思悪く笑ってみせた。 あー!その笑顔可愛いー! 涼しげな目元はクールで、誰かさんを思い起こさせる。 けど、あの彼はこんなに純粋な瞳はしてないなって思った。 あ、決して霧緒の目が淀んでいるって言ってる訳じゃないぞ。 素直で優しい感情が伝わってくる玲二の瞳よりも、冷たい印象を受けるあいつの眼差しは、普段は何を考えているのか分からないくらい無機質だ。 その目が怖いって言う人はいるけど、俺は少し違う。 ……まぁ、ギラギラしてたり冷たく見えるけど、実はとってもまっすぐで綺麗な眼差しをしているんだ。 こっちに一人で引っ越して来てからずっと、俺はそんな瞳に支えられていた。

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