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第483話

あいつのあの瞳をまた見つめてドキドキしたい。 勿論、離れている今も霧緒とは定期的に話をしている。 向こうでの学生寮での生活や学校のこと。 授業の話はちょっと難しい内容だったから上手く説明できないけど、毎日充実しているみたいだ。 食べ物は「大体パン食ってる」って言ってた。 元々食に興味がないヤツだからパンって何パンだよって思う。 サンドイッチみたいのならいいけど、実際何を食っているのか分からずでとても心配だ。 パンだけじゃなく、バランスのいい食事摂れよって毎回言ってるけど、どうなんだろう。 食べ終わった弁当箱をしまいながらそんな事を考える。 まぁここで俺が心配しても仕方がないんだけどさ。 「ふぅ…………」 「……詩」 「ん?何」 隣を見れば、不安そうな顔をした玲二が俺の顔を覗き込んでいる。 「玲二?どした?」 「詩、本当大丈夫?」 「え、何が?あ、お腹いっぱいだけど苦しくない。大丈夫だぞ」 「そんなんじゃないよ。最近の詩は元気ないから。萩生ってちょっと落ち着いた?何か大人っぽくなったよね?カッコ良くなったね~。とか回りから噂されてるんだぞ?もう僕信じられないよ」 「何だよそれ。俺元気だから」 「……ため息多いし、気だるい詩も確かに萌えるけど……。元気で明るい詩が僕は好きだよ」 「はは……ありがとう。玲二」 にっこり笑ってから玲二をやんわりと抱き締めた。 玲二の身体は霧緒よりも細くて薄いけど、とってもあったかいし、いい匂いがする。 たまらず抱き締めている両手に自然と力が入ってしまう。 「もう……詩って本当宮ノ内先輩ラブなんだね」 「……い、言い方~。ハズいから……それ」 「この面食い~!なんてね。……帰って来たらいっぱい甘えてやるんだぞ」 「…………うん」 玲二も両手を広げて俺を包み込んでくれ、暫くそのままの状態で互いのぬくもりを感じていた。 ハタから見たら立派なホモカップルだ。 幸い誰にも見られることはなかったけど、玲二がこんなにも頼もしいなんて、愛しいと思えるなんてね。照れくさくなるくらい嬉しい。 ありがとう、玲二。 ごめんね、玲二。 きっと今の俺……らしくないんだよな。 玲二にこんなに心配されるなんて、よっぽど変なのかな? 正直自分じゃその変化は分からなくて、今までの自分がどういう性格のヤツだったかさえも思い出せない。 霧緒がいるのといないのとじゃ全然違うってこと? 俺は、今の俺はどんな俺なの?

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