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第484話
霧緒が側にいなくても、元気に頑張るって決めたんだ。
恋人が知らない土地で一人で頑張ってるのに、変わらない環境の俺がだらだらと毎日を過ごしていたらダメなんだ。
1日1日を無駄にしないように俺も努力しないと。
3ヶ月なんてあっという間なんだから。
霧緒はあの霧緒だから、次会うときは絶対レベル上げて帰国するハズだ。
英国仕様に仕上がったハイレベルのイケメンに、久しぶりに会ったら俺は絶対キュンキュンどころじゃないだろう。
前に女子が言ってたように、孕んで吐くかもしれない。
あ、あいつ……日本語喋ってくれなかったらどうしよう。
英語もっと勉強しておけば良かったなぁと今更後悔しても仕方がない。
……
……それよりも何よりも心配なのは、久しぶりに会った俺を見てあいつがどう思うかだ。
何も変わらない普通の俺に会ったら今までの愛情が一気に冷めてしまうかも。
え、俺こんなヤツと付き合ってたっけ?
そう思われるかもしれない。
久しぶりに霧緒に会えるのは嬉しいけど、そんな不安が頭を過る。
だってもし、もしもそうなったら俺は生きて行けない。
今の俺って頑張ってる?
ちゃんと成長してる?
そんな焦りが出てきてしまう。
学校帰り見慣れた景色を眺めながらそんなことばかり考える。
冬が近付いているような冷たい風が吹いていて、鼻の奥が冷気でツンてした。
「今日ちょっと寒いね」
「うん」
委員会が伸びていつもより帰りが遅くなってしまった。
玲二も同じ環境委員だから一緒なのがありがたい。
辺りは既に薄暗くそれだけで寂しく気持ちになってきてしまう。
「詩は今日はバイト休みだよね。何か食べてく?」
「ン、そうだなぁ。あったかいの食べたいなぁ」
「だねだね~肉まん餡まん。あったかいタピオカもあるぞ~」
「おーう」
帰り道の最寄りのコンビニ目指して歩いていた時だった。
「萩生せんぱーい!!」
「ン?」
「あと、屋内せんぱーい!」
車道を挟んだ公園から手を振っていたのは後輩の篠島だった。
……
……!
「ね、詩~。あれ篠島じゃん。久しぶり~」
「……」
「せんぱーい!こーんばーんはーーー!」
ドキンと胸が鳴った。
嘘……急に胸が苦しくなる。
イヤイヤ違うし。
……だけど、どうしよう。
ふらふらと車道を横切って、公園へ急いだ。
「……!」
「え、何?詩っ!?ちょっと危なっ……!」
叫ぶ玲二の声も無視して、篠島の元へ急いだ。
ドキン
ドキン
ヤバい……違うって分かっていてもヤバい。
ヤバいよ。
でも切ないし苦しくて動悸が止まらない。
篠島は仕服姿で、パーカーにジーンズというシンプルなものだけど、身長があり相変わらずのイケメンっぷりだ。
黒く緩い癖毛は前より伸びて少し大人っぽくなった気がする。
「……し、しの……しまぁ…………」
「……え、萩生せんぱ?どうしたんで……えっ!!?ええ!!?ちょっ……」
「う、う、うう!……………っ。うう…………うう~~っ……!!」
俺は我慢出来ず、その場で膝から崩れてボロボロと号泣してしまった。
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