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第485話

夜壱 え、ラッキー!あれ先輩だ! そう思い、萩生先輩に声をかけた。 学校帰りの先輩に会えるなんてなかなかないことだから、嬉しくてつい手を振ってしまう。 だけどこちらに気がついた時の先輩の顔。 明るい萩生先輩の顔から表情がなくなり、まっすぐ公園にいる俺に駆け寄って来て驚いた。 周りが見えないような、危なっかしい足取りだったから。 まるで俺しか見えてないみたいな必死な感じで、ドキドキしてしまった。 駆けてくる萩生先輩がスローモーションに見えたくらいだ。 ま、まさか先輩? 俺に会いたかった? まるで付き合ってる恋人みたいに先輩のことを思い切り抱き締めてもいいのかと思った。 って、マジで思った。 それくらいの勢いで走って来たからつい期待しちゃうだろ? でも萩生先輩は俺の胸に飛び込んで来ることなく、目の前で泣き崩れてしまった。 一体何が起こっているのか信じられなくて呆然としてしまったんだ。 本当……驚いた…… それから約30分後。 「も~~~~!マジ驚いたんですよ~俺!」 「まぁまぁ、篠島。許してやって。はい、ホットタピオカ~おごりだから気にしないで飲んでよ」 「……あざ~~す」 半笑いの屋内先輩から、あたたかなタピオカミルクティーを受け取る。 萩生先輩と一番仲がいいこの先輩も、柔らかな雰囲気をしていて癒し系だなぁと思った。 屋内先輩と並んで暗くなった公園のジャングルジムに寄りかかり、ミルクティーを飲んだ。 あたたかくて甘めのミルクティーがやたら上手い。 目の前にはまだ半泣きの萩生先輩……と、サスケ。 サスケはうちで飼ってる犬だ。 うちの愛犬は、萩生にずっと抱かれひたすらもふもふされて明らかに戸惑っていた。 「うわ~ん!霧緒~~~っ!」 『僕キリオじゃないよ~!この人誰?』ってサスケの心の叫びが聞こえてくる。 うちのサスケの犬種はシベリアンハスキーだ。 狼に似たサスケの顔が、どうやら宮ノ内にソックリらしい。 ……言われて見れば、冷たい目とかがそんな感じするけど、飼い主からしたら複雑でとっても受け入れがたかった。 「ぷ……似てる」 「……そう……すかねぇ」 「詩って大の犬好きだし、宮ノ内先輩似のサスケくん見たら一気に気持ち緩んじゃったのかもね。詩の実家で柴犬飼ってるんだって~。うわ~!サスケくんの無表情な感じとか宮ノ内先輩に超ソックリ!サスケくんもイケメンだね~」 「サスケ……お前……」 萩生先輩にいとおしそうにもふもふされてるお前が羨ましい。 主を差し置いてそんな熱烈な抱擁されやがって。 「わあ~!お前超可愛いなぁ~!いい子いい子~」 犬は犬好きの人間が分かるらしく、サスケもまんざらではないようだ。 今は無邪気な笑顔の萩生先輩に顔をすり寄らせてクンクンと甘えはじめていた。

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