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第489話

予想外に沢山泣いたからか、かなり体力を消耗したみたいで身体がダルい。目も腫れぼったい。 だけど不思議と気持ちはスッキリしていた。 泣く前と後では目の前に広がる夜の景色が違って見えるからおかしい。視界がクリアになって見慣れた街並みが新鮮だ。 いっぱい泣いたなぁ。 信じられないくらい涙が溢れて止まらなかった。干からびるんじゃないかっていうくらい。 あはは……後輩に恥ずかしい姿見せちゃったな。それに心配されてたなんて、もうびっくりだよね。 ふと、隣にいる玲二の顔をチラリと伺うと、眠たげな瞳と目が合った。 「……ぷ、詩の目腫れてる~」 「あはは……だよね。何かここ最近毎日玲二と一緒にいるのに、久しぶりに玲二の顔を見た気がする」 「何それ」 「……はは……だ~よな~~」 「……」 「……」 「……泣いて……ちょっと、楽になった?」 「……………ん……」 うつ向き自分と親友の歩く足元を見ながら玲二の腕をくいっと引き寄せ腕を組んだ。その腕にきゅっと力を込める。 「やだ……これカップルみたい」 「イチャイチャカップルな」 「あはは。浮気浮気~~」 「…………玲二、有り難う」 「気にしない。気にしない。詩は溜めすぎ~」 「玲二大好き。超好き……いつも側にいてくれて有り難う。俺……ゴメン……分かった気がする。恥ずかしいな」 ポンポンと頭を撫でてくれた。 「まぁまぁ、詩が元気になって良かった。ずっとらしくなかったんだぞ~?気がついた?」 「……なんとなく。らしくなかった?」 「うん。ずっと無理して頑張ってる感じだったから……弱音も吐かずにさ……」 「……そか。俺、無理してたのかぁ。自分じゃ分からなくて……霧緒がイギリスで毎日色んなこと学んで吸収して頑張ってるんだろうなぁって思ったら、俺がしてることなんて全然普通だなぁって。やって出来て当たり前のことだからと思ってやってたから……」 「当たり前のことをちゃんとしてるって時点で詩は良くやってると思うよ。学校行ってバイトもして、家のこともして。っていうか詩は普段から頑張る子なんだから、こういうツラい時に手を抜いても誰も文句言わないよ。勿論宮ノ内先輩も」 「でも……霧緒はどんどん」 「……どんどん……先に行っちゃう?」 「…………う、うん」 「それ、僕も思う。何かさぁ~高校生と大学生ってだけで凄い置いていかれた感じ半端ないよね。急に宗太が大人になって見えるんだ。何も変わらない筈なのに何なんだろうね。僕がそう思うんだから詩は余計に思っちゃうよね」 あぁ……そうか。玲二もそう思っていたのか。菊池先輩も大学生活忙しいって聞いていたけどそれだけだ。それに対して玲二がどう感じて考えていた何て今まで考えもしなかった。そんな話すらしてなかった。それか……話をしたけど余裕なくて聞いてなかったとか?俺は自分のことばかりで回りが玲二すら見えていなかった。 ……ダサいなぁ俺。本当ダサい。 「玲二、菊池先輩と会えてるの?先輩大学生になってから独り暮らし始めたんだよね?」 「一応会えてはいるよ。何回かアパートお邪魔したこともあるし」 「……へーーーーー」 「な、何」 「エロ~い。それだけでエロいわ玲二くん」 「そんなんじゃ!」 「そんなんじゃないの?」 「っ……そ、そんなんじゃあるけど!」 「ぶっ!ははは!あらあら仲良しだこと~!羨ましいったらないわ~!」 「……!ご、ごめ……」 「ゴメンじゃ全然ないよ」 「詩はちゃんと宮ノ内先輩と話したりしてるんだよね?会いたいとか好きだとか伝えてるの?」 「……ん~……どう……かな」 「どうかなじゃダメだよ!ちゃんと言って!先輩だって嬉しい筈だから」 「う、うん。分かった。玲二と話したら凄い元気出た。元気でたし、お腹も空いてきたわ」 「うん。詩も後少しだよ。先輩帰って来たらいっぱい甘えなよ。いっぱいいっぱい!」 「うん!玲二有り難う!じゃ、また明日!」 「じゃあね!」 駅前で玲二と別れ、すっかり暗くなった道を家に向かって歩きだした。 まだ少し身体の右側があったかい気がする。玲二が残してくれたぬくもりが今の自分にはとてもありがたかった。 俺……独りじゃないんだよな。

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