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第5話*
霧緒
結局女は顔を真っ赤に染め泣きながら帰って行った。
…
はぁ…
俺が泣きたい。
マジウザい。
溜息が出る。
自宅に来られるとか本当嫌で女子にも言ってるんだけどな。
誕生日だとか、バレンタインだとか、イベントごとは特に自分のテリトリーを荒らされてるみたいで好きではない。
女子は話題を共有したがるから大体の女子が知ってるはず。
うちの学校なら特に。
だから基本俺の嫌がることはしてこない。
まぁたまに今日みたいに、外れた勘違い女が来たりするのも事実なんだけど。
だって?俺みんなに、女子に愛されてるから。
やたらカッコいいとかエロい!
とかキャーキャー言われていれば自覚せずにはいられない。
定期的に告られればさ……
鼻血出されたらさ?
気が乗ればキスだってセックスだってするけど、面倒くさくなるから…続かない。
グイグイ来られると、さざ波のように引く。
飽きっぽいんだよな…俺。
あー、今日のテンションマジ下がった。
あの女のおかげで。
くそ…
イライラしてると、
ピンポーーーン!
……
「…」
「…」
「…」
「…何の用…」
モニターで確認したらさっきの女ではなかった。
…
ぐるぐる巻きのマフラーにパーカー。
で明らかに寒そうな恰好。
知らない男の子だった。
細っこい。中学生?
顔は色々ぐずぐずでよくわからない。
「あ、あの!と隣の椿さんち!
に、引っ越してきました。
はぎぅってい、言いまふ!
来月から日ノ原高に通う予定でふ。
どうぞよろしくお願いしまふっ!!」
おーぴかぴか新一年生ね。
かわいいですねー。
はいはい。
かみかみだけどなんとか聞き取れたよ、少年よ。
「…あ、そう…」
「…こ、これつまらないものですがどうぞ…」
「…どーも…」
いらない菓子折りゲット…
渡して立ち去るときはダッシュで立ち去っていった。
「け、けも…の…!」
って声が聞こえたけどなんだ?獣?
俺のことか?
失礼な。
隣の椿宅の玄関に入る音が微かに聞こえた。
今のやつの名字が萩…?なんだっけ?
隣の椿家のばあさんは知ってる。
うちの家庭環境を把握してくれていて何かと気にかけてくれ、若いころは美人だったんだろうなーって感じのばあさん。
小さいころから知ってるから御裾分けの料理は抵抗なくいただける…それに美味しいし。
料理全然しないからなぁ俺…ありがたいわ。
四月に入り、
高校最後の新学期が始まった。
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