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第6話

この椿家に引っ越ししてきてひと月経つけど、 気が付いたことがある。 俺の部屋はお隣宮ノ内宅に面していて、 窓からはもちろん隣さんのベランダが見える。 せり出したうちの瓦屋根から距離は近い。 純和風で築何年になるのかわからないうちと、 近代的でモデルルームみたいな隣の家とのギャップが面白い。 で、 気づいた。 俺の部屋の窓を挟んだすぐ隣の家の部屋は宮ノ内先輩の部屋らしい。 朝、換気しようと窓を開けると隣の家のベランダに出てくる先輩と目が合った。 「あ」 やっぱりクラスの女子たちが言ってた先輩だ。 サラサラした長めの前髪。整った顔立ちは綺麗で人目を引く。…男の俺が見てもカッコいい。 「…」 ばっちし目が合ってしまったらどうにも避けることもできない。 「おはようございます」 とりあえず挨拶しとこ。 「…」 寝起きですかね。 じーっと視線感じますけど… 挨拶はしたし窓から離れようとした。 「おはよ」 そっちを見るとひらひら手を振りながらやんわり笑ってる先輩がいた。 寝起きのイケメンスマイルがさく裂してる! 「あのさー君、はぎ…なんだっけ?名前」 「…はぎう、はぎううたっていいます」 この間の獣っぽい感じが全然しない。 あーよかった。思ったより優しそうな先輩だ。 ほっとしたのもつかの間… 「はぎうくんさ、この前挨拶に来た時さ。獣…って叫んでたよね。あれ俺のことだよね?なんでかな?教えて」 「え…」 あれ聞かれてた。 つか、声に出してた?俺。 やば。 眼がぎらぎらしててやばかった…怖かったからです…とは言えません。 言えませぬ。 宮ノ内先輩はベランダに肘をつきながら俺を眺めてる。 やんわりスマイルがエロい。 「ええと…なんていうか」 「…」 「あははーわんわん…ぽかった…ん…ですかね?」 ぴしゃっ 笑顔で答え先輩のリアクションも返事もまたずに 窓をしめた。 明らかに先輩の目は点になってたけどいいや。 イケメンは目が点になってもカッコいいんだなとか思いつつ。 ほら、わんわんってなんか獣よりも可愛いし? 愛されてる感じあるじゃん? うんうん! … つまり 獣発言は忘れて欲しい…です… お願いします先輩。

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