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第10話*

霧緒 昼休み。 「今日の学食混んでるな…」 「あれだ、今日ビーフカレーだ。あれ目当てがいっぱいいるんだろ」 「あー月に一度のビーフカレー♪」 「霧緒ビーフカレー好きだったけ?」 「いや。食ったことない」 「だろうな」 昼休みはほとんど学食ですませる。 俺と一緒にいるのは中学からの友人、菊池 宗太(きくち そうた)。 「宗太…なに食う?」 「んービーフカレー」 「美味いのそれ?」 「食べる?」 「いや…パスタでいい」 「あっそう。霧緒…相変わらず食わず嫌いだよね」 「…食に興味がないだけ」 「はいはいそうですか」 「あー宮ノ内くーんいたー。ねぇこっちで一緒に食べようよぉ」 知ってるようで知らない女。 「…あーごめん。今日はパス無理」 「えー!!なんでぇええ!」 「うっさい…無理だってば」 「…!!ひっどぉ」 誰だかわからない女の誘いを断る。 んー宗太に聞くと隣のクラスの女子らしい。 へー…そうなんだ。 「相変わらず酷い男だよね。霧緒って」 って言われた。 遠巻きにわあきゃあ黄色い声が聞こえるけど、 ああ、一年生とか新鮮だよね。 幼い感じ。 初々しいっていうの? なんてそれ以上俺に近づかないでほしい。 面倒だから。 … ん。 んーー? 窓際の席になんか見たことある子。 発見。 ぴかぴか一年生くんだ。 お友達ともぐもぐ食べてる姿が何とも目を引く。 食券を宗太に預けてそっと近づく。 なんかカレー食べさせてもらったりしてー。 いいねー楽しそうで。 萩生くんはお弁当らしい。 おーばあちゃんのお手製弁当かー。 あのばあちゃん料理上手だもんね。 普通だよ普通って萩生くん言ってるけど、これは普通じゃないよ。 思わず。 「んー普通じゃないでしょ」 って言葉がでちゃった。 ぴかぴか一年生×2が振り返る。 萩生君もその友達も凄い顔で俺を見てる。 あーその顔面白い。 そういえば学校で会うのは初めてかも。 なんでここに? みたいな顔されたけど同じ学校通ってるって知ってるよね? 俺…ここの先輩なんだけど。 「萩生君はいつも弁当?」 「え、まあ…はい、大体そうです」 「お弁当作るの大変じゃない?」 「いえ、そんなことはないです」 「へー」 弁当箱に詰めたりお手伝いしてるのかな。 顔赤くして一生懸命食べてる。 耳まで赤いけど大丈夫か? 襟足が短めで細い首が綺麗。 弁当覗いてるふりして萩生君のうなじを何となく眺める。 「萩生君、これは何?」 「卵焼きです…もぐ」 「これは?」 「もぐもぐ…ポテトサラダ…です」 「これは?」 「もぐもぐ…あすぱらです」 「ねえねえこれはー?」 「…パセリ…」 「これ「「トマトー!!」 「…です」 うわぁ萩生君赤い顔して切れた。 あーそっか肌が綺麗だからうなじも綺麗なのか。 弁当のおかず聞きながらそんなこと考えてる俺ってなんなの。 後輩怒らせちゃったかな。 口がとがってるよ。 口が… ん 口のすぐ脇にご飯粒発見。 何だかそれとっても可愛いんですけど。 「ご飯つぶ。…ついてる」 親切だなー俺! ついつい笑いながらご飯粒食べちゃった。 あんまりこういうことしないんだけど。 お隣さんの好ってやつかな? 二人ともがたがた席を立って 「失礼しました!」 だって。 気がついたら俺の後ろにトレイを二つ持った宗太。 あーさっさと行っちゃったよ。 残念。 「なんか急いでたのかな一年生くんは?」 さっき萩生くんが座っていた席に座りながら宗太に聞く。 「急いでるというより、怯えてたんじゃね?」 「なんで?」 「自分に聞いてみろ」 ジト目の宗太が俺を見てる。 「?」 「…口についてるご飯粒食べるか?普通」 「あー。サービスしちゃった?俺」 「サービスって…お前そういうのしないだろ?そもそも手作り弁当嫌いなやつが。人の口についてるの食うとかありえないだろ」 「そいえばしないな。お前の口についててもしないな絶対」 「!!あったりまえだろっ!キモイ!」 「なんだろうね。無意識にだったね」 不思議と嫌ではなかった理由を考える。 ま、答えは出てこなかったけど。

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