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第12話

その日の夕方。 俺は紙袋を下げて宮ノ内先輩の家の前に立っていた。 この時間まだ闇ではなく薄暗い。 柔らかな風が心地いい。 昼に絡まれたから何か行くのに若干抵抗がある。 いやいやでも近所のよしみ、こういう縁は大事にしないといけない。 紙袋の中味はおかずが入った保存容器。 宮ノ内先輩の親は海外に転勤中らしい。 一人暮らしなのかー。 … 寂しくないのかな? 俺なら寂しい…たぶん。 インターホンを押す。 … … あれ、いない? 留守でしょうかー? おーい。 ピンポーン やっぱりいない。 デートとか? あーあせっかくのおかず勿体ないな。 仕方ない。 そう思って自宅に戻ろうとした時。 「あれ…萩生くん?」 「あ」 ちょうど帰宅して来た宮ノ内先輩がゆったり歩いてくる。 ひえー!歩く姿もカッコいい。 やっぱり足も長いんですね。 でも、あーよかったよかった。 ちゃんと渡せる。 「こんばんは」 「はい、こんばんは」 「これー、おかず持って来たんで食べて下さい」 「いつも助かりますとおばあ様にお伝え下さい」 ニコッと笑う先輩はやっぱりカッコいい。 「悪い留守にしてて。何回か来てくれた?」 「いいえ、今ちょうどピンポンしたところだったので大丈夫です」 「そっか…あ、ちょっと待って。前の容器返してないんだ」 玄関まで案内される。 宮ノ内先輩は紙袋持って家の中に… すっごいシンプルで家の中もカッコいいというか綺麗。 黒い扉が渋くてまたカッコいいなー。 そんなことぼーっと考えているとすぐに先輩が奥から出て来た。 「はい、お待たせ」 紙袋は同じだけど、中にはからの保存容器が入っていた。 俺が引っ越して来る前にばあちゃんがお裾分けしたやつっぽい。 紙袋を受けとる。 「じゃ失礼しまー」 ~♪~♪ あ、俺のスマホのメロディーたぶん玲二からだ。 「いいよ。でなよ」 焦ってあわあわしてると先輩がそう言ってくれた。 すみません!って態度で先輩の言葉に甘えてポケットからスマホを取り出した。 「もしもし。玲二?うん、あのさ今取り込み中。うん、うん。後でかけ直す」 「…え?提出プリント?…それ先週のやつだろ。俺もう提出したからないし…。部屋あさって見つけろよ。ぷ、なにそれ?部屋ゴミ屋敷なの?富士の樹海?ゲームばかりしてるからだろ。掃除しろ掃除!あっはは!なにそれっ!!」 は!!!! ってところで目の前の先輩と目が合う。 笑ってない。 … あああ… やばいここうちじゃねぇ。 話に気がいって先輩のこと一瞬忘れてた。 ひえー!変な目で見られてる。 非常識だよな。 すみませんすみません。 あわてて通話ブチ切って先輩に謝った。 「…も、申し訳ございません」 「…ぷ。いいよ。でなよって言ったの俺だし」 「本当すみません!」 うつむきながらむっちゃ反省してたらスッと手が伸びてきた。 先輩が俺のスマホを取り上げた。 「あれ?あのっ」 あれ…何か…いじってますか? 気が付くともう片方の手には違うスマホ。 たぶん先輩の? 「はい、これ俺ね。友達追加しておいたからね」 「へ?」 スマホを返されて確認するとフレンドのところに Miyanouti のアイコンが… 「これでうち訪ねる前に不在確認できるでしょ?」 あーなるほど! 先輩優しいっ!て感心したのもつかの間。 「萩君、今さっき俺のことほったらかしにしてたよね?なんだろう?挨拶来た時といいベランダの時といいお昼の時もだけど、ちょっと俺の扱い適当じゃない?なんか面白くないんだけど」 ちょっと俺の髪わしわし撫でないでください。 笑ってるようで目が笑ってない… つか、この人色々忘れて欲しいこと覚えてる。 根に持ってる!

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