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第15話
「ねぇ、宮ノ内君…あの子だれ?」
「ん?萩生君のこと?」
「一年よね?」
「そうだよ」
「なんか宮ノ内君、あの子と親しい感じ?」
「なんで?」
「宮ノ内君が名前…覚えてるの珍しいなと思って」
「そうかな」
三年、緑川露子 は、先ほどいたちまっこい一年生を思い浮かべる。
あの子を見て優しく微笑む宮ノ内が以外だった。
あの一年の名前を知ってるの?
私があなたに名前お覚えてもらうのにどれだけかかったと思ってるの?
それがたとえ男だとしても面白くない。
ギラギラする思いを抑えつつ体を宮ノ内にさらに密着させて腕を絡みつける。
「キスしてくれないの?」
自分が魅力的に見えるだろう表情で微笑みかける。
…
宮ノ内の表情は冷たい。
何を考えているのか読み取ることはできなく不安になる。
…
彼の溜息…
「しなーい。もうしないよ」
???
するりと腕をほどかれてしまった。
「もういいだろ?飽きちゃったよ」
体を離される。
あ、飽きちゃったですって?
「なっ!何言ってるの?」
「んーあのさ、もうやめてくれない?って言ってるの?付き合ってるわけでもないし。呼び出されるのもう面倒くさいし」
「はあ?ちょ、ちょっと私のこと好きじゃないの?前に魅力的だって言ってくれたじゃない!」
「魅力的だとは言ったし。実際緑川は魅力的だと思うよ。すごい美人だし、プロポーションいいし」
「だったら…!」
「…だから飽きたって言ってるだろ?」
急に宮ノ内の声が低くなる。
「勘違いしてさ…わがまま言うやつ俺嫌いなんだよね」
「初めに言っただろ?俺すぐ飽きるよって。付き合わないよって」
サラサラの前髪の間から覗く瞳が心に突き刺さるように美しい。
私を見る目はその他多数と同じ。
興味をなくした冷たい目線。
「わかった?」
有無を言わせない。
圧倒的に他の男子よりかっこよくて。
彼を自分のものにしたかった。
彼と一緒にいる優越感に酔った。
自分の容姿に自信があった。
特別な存在になれる。
彼の心を自分のものにできる自信があったのに。
…悔しい…
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