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第19話

二階に上がり宮ノ内先輩の部屋に案内される。 「ここが俺の部屋」 机にベッドに本棚、全体的にグレーでまとめられていて落ち着いた印象だ。 先輩の匂いがするー。先輩はベランダに案内してくれた。 隣の家は当然真っ暗…先輩の部屋の明かりが照らしている。 「窓開いてる?なんか閉まってる感じじゃない?」 「…ちょっと行ってみます」 開いてると信じて俺は裸足でひょいっと飛び移った。 あ、やっぱり近いな。 先輩はさっきまで心配そうにしていたが、今は何か目がキラキラしているのは何故? 俺、猿っぽいかったかな…とりあえず窓を確認しないと! 頼むお願い! … … 閉まってる。 ばっちり閉まってる… さすが、ばあちゃん…戸締まり万全す。 ああ、家に入れない帰れない。 どうしよう! 「駄目だった?」 「…はい…駄目でした」 先輩の家のベランダに戻ると、先輩が濡れタオルを貸してくれた。 しょんぼりオーラを撒き散らしながら借りたタオルで足を拭きながら考える。 玲二の家は確かちょっと遠いはず…詳しい場所聞いてみようかな。 「萩くん、明日ばあちゃん帰ってくるんだろ? 今夜うち泊まっていきなよ」 「…え?」 「隣なんだし、付き合いあるんだからさ。よかったらどうぞ。萩くんが良ければだけど」 「え、マジで…いいんですか?」 「いいよ。お隣さんじゃん?」 「ご迷惑じゃないでしょうか?」 「ないない、ほら遊びにおいでって言ってたし。歓迎するよ?」 その時は宮ノ内先輩が神様のようにキラキラ輝いてみえて嬉しくてテンション上がってしまった。 まさかそう言ってくれるなんて思ってなかった! 「先輩っ有り難うっーーー!!!」 喜びのあまり先輩に抱きついた。 あー!ちょう嬉しい! 今夜野宿しなくてすむー!神様仏様宮ノ内様! 「…喜んで貰えてよかった」 先輩がやんわり抱きしめて返す。 は! 「あわわ、すみません!」 慌てて離れる。 わー!うっかり嬉しさのあまり抱きついてしまった! 見た目に反して以外としっかりしたボディで何か羨ましいとか思ってしまった。 俺の身体と全然ちがう!嫉妬!腹筋とか鍛えてるのかな? あードキドキする。 でも、先輩といると何となく落ち着く。 お兄さんみたいな?うーん、なんて言うんだろう。 すると頭をわしわし撫でられた。 「別にいいよ気にならないから。あー…自分ちだと思って寛いでいいから。ほらほら、荷物片付けよう。何か冷蔵庫にしまうのあるんじゃない?」 「あ、スーパーのレジ袋に肉入ってる」 「肉?」 「そう今日は俺……」 ああ、そうだ! 「先輩!!」 … 「晩御飯作ります!」 って言ったんだけど。 「先輩んち、…なんもないんすね」 ひとんちの冷蔵庫の中を眺めながら呟く。 「ないよ?俺料理しないから」 「ご飯とか…は?」 「ない。炊き方知らないし」 ひぇ!マジか! 「あ、パックのやつがあったかなー。レンジで温めるやつ」 先輩んちのキッチンはピカピカのシステムキッチンでお湯くらいは沸かすんだろうけど、全然使われてる様子がない。勿体ない。 …調味料はあるから何とかなりそう。 「キッチン借ります」 「どうぞどうぞ」 先輩はテレビをつけソファーでごろごろしながら楽しそうにこちらを眺めてる。 何だろうわくわくしてる子どもみたい。 緊張するからあんまり見ないで欲しいんだけど。 「萩君は料理するんだねー。おばあさんが教えてくれるの?」 「いえ、実家で普通にしてましたよ」 「へー凄い。あ、もしかしてこの間お弁当に入ってたハンバーグ実は萩君が作ったやつだった?」 「ん?あー……はい、…そうです」 「じゃ、先日のお裾分けも?」 「…」 「…」 「…そうです」 「やっぱり!今までと違うおかずだったからさーもしかしてって思った。美味しかったよ!」 あああ…にっこりスマイルが眩しい。 先輩が素直に驚いて喜んでるみたいなのが可笑しかった。 料理することはうちでは当たり前のことなんだけどな。 「はい、出来ました」 「え、もう?」 俺が一人で食べる予定だった… 豚の生姜焼き定食の完成。

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