23 / 506
第23話
「もっちーって誰?」
「…はい?」
「誰なの?」
先輩の手は変わらず、俺の髪や顔を優しくなでている。
声のトーンは無機質で、どう答えたらいいのか不安にさせる。
誤魔化しても仕方ないし、
「えーっと…あの…」
「…」
「実家の犬です」
「…」
「…」
「…いぬ?」
「…はい柴犬」
「わんわん?」
「…はい」
先輩の声のトーンがいつものに戻った気がした。
ごめんなさい。
また先輩を犬扱いしてしまった。
獣→わんわん→もっちー→先輩
身近な愛犬に昇格したよ、やったね先輩!
なんて余計な妄想をしていたら……
「そっか」
微かな溜息とともに先輩が呟いた。
優しく動いていた先輩の指は気が付くと俺の下唇をふにっとなでつけていて先輩の顔がさらに近づいた。
口に違和感。
唇に指ではなく、先輩の唇が重なり合っていることに気がついた……時にはもうそれはすぐ離れていて、また先輩と視線が絡む。
再び唇が重なる。
今度は唇を吸われなぞられる。
驚きで声が出そうになった。
それを見逃さず、するりと先輩の舌が口内に滑り込む。
目が回りそうだった。
歯茎を辿った舌が俺の舌を探し絡みつく。
い、息ができない!
こんな大人のキスしたことなくて…気が遠くなりそう。
体がしびれてしまったのかと思うほど強烈だった。
優しく下唇を吸われやっと解放される。
唾液に塗れた先輩の唇が…吐息が…官能的でやばい。
完全にフリーズして呼吸困難になっている俺を優しく見つめると…
「…ご馳走様…」
カッコいいエロスマイルを送られた。
絶対涙目だ俺。
恥ずかしくて先輩から離れようとした。
…
あ、
そしてやばい。
朝の生理現象と重なって
俺のあれが?あれの状態?になっている。
やばい。
えーーん!!!!
ともだちにシェアしよう!