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第33話

… 緑川がハンカチ貸すとか ありえないだろ。 あの女王様がそんなことするわけないじゃん。 でも、そんなことあの一年に言ったらビビって泣いちゃうでしょ? …すごく心配してたし。 菊池は足早に一番奥の教室に向かう。 教室の入口にちまっこい子発見。 萩生だー! で…緑川だ。 遠目でもわかる美人。 見た目は文句ない美女なんだけどね…中身がなぁ… しかもやたらくねくねしたりして、猫かぶってるな? そう思って見ていたらあいつ…萩生に抱き着きやがった! ちまっこい一年生が一瞬で固まる。 あーあー……見てらんねぇー 話の内容はここからじゃわからないけど、女郎雲の罠にかかる蟻ちゃん?蝶々? そんなイメージだ! こりゃどうしたものか…。 ふらふらと立ち去る萩生を横目で眺めながら菊池は考えた。 遠目で緑川とバチッと目が合う。 ふん!と笑い教室の中に消えていった。 女王様の氷の微笑。 こえーーーーー 萩生の後を追い…下で待っている屋内とも合流する。 屋内は萩生が無事帰還したことにほっとしていた。 友達思いだねー。 とりあえずは緑川には気をつけるようにと忠告し、念のため連絡先も交換して別れた。 萩生を突き飛ばしたやつは…調べれば簡単にわかるだろうな。 ほら俺さ、誰かさんと違って女子に優しいから。 あーやれやれ。 可哀想な後輩たち… 完全に巻き込まれてんな。 あの先輩に… 緑川と萩生が今度お茶するって? 何考えてんだあの女。 教室に戻り、窓際でひたすら読書にふける友人を見つめた。 バシッィ! とりあえず頭を叩いておいた。 「…なんだよ」 眉間にしわを寄せる顔もイケメンだ。 「なんだよじゃねぇ…バカ」 「お前のせいで後輩たちが大変なことになってるぞ」 「え?」 「緑川が萩生にちょっかい出してる…」 「…緑川?」 「…あーいいや。あとで説明する」

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