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第48話
…
あーーーー…
「痛って…」
ベッドに腰を掛けながら左の頬を手で押さえる。
緑川先輩の本気のビンタだー。
ジンジンする。
…怒らせちゃったなー。
傷ついただろうな。
思わず本気で怒ってしまった。
…でも…
…自分を大事にしない奴は嫌だ。
ましてや女の子があんなことするのは許せなかった。
萩生家の女は強い。
あんなことは絶対許せない。
「でも…俺も反省…」
女の子を傷つけるなんて最低な男だなー。
ねーちゃんに知れたら説教されるな。
「あはは」
…
…
ジワリ…
目の前が涙で滲む。
ごしごし
…?
人の気配がしてふと顔を上げる。
!
すぐ近くに
宮ノ内先輩が立っていた。
…
「あれ…どうして…」
「…」
「先輩が…ここに?」
「…」
「あ…」
「…」
「具合が悪い?」
「……違う」
先輩が俺の前に屈む。
今にも泣きそうな顔…
「…腫れてる」
痛々しそうに左頬を見つめる。
すぐに冷蔵庫から保冷剤を出してくれた。
「…有難うございます」
「ん」
ヒンヤリ気持ちいい。
この保冷剤お世話になるの2回目。
…
…
はぁ
もう限界かも…
「先輩…」
「…ん」
「…ちょっとぎゅーしてください」
「!!」
先輩に向かって幼児がするように両手を広げた。
恥ずかしいとかそんなの関係ない。
完全に宮ノ内先輩不足。
先輩の瞳が一瞬揺らいだけど、すぐにぎゅっと抱きしめてくれた。
きつく優しく。
「充電ーー」
そう呟くと抱きしめる力がさらに強くなる。
苦しいけど嬉しい…
久しぶりの先輩の匂い…
くらくらする。
強張っていた胸の緊張が解けていく感じ。
先輩の手が抱きしめながら優しく髪を撫でてくれる。
もう胸いっぱい幸せな気持ちになる。
「萩生…ごめん」
「ん」
「辛い思い…させた」
「…ん」
「痛い思いも…」
「…ん」
気がつくと先輩は俺の髪の毛やおでこ、
こめかみにキスを降らせる…泣いた瞼にも。
「…!」
優しいキスで口をふさがれた。
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