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第65話*
霧緒
俺に素直にシャンプーされてる詩が可愛い。
というか洗ってる最中に眺める詩の細い背中がたまらなく色っぽい。
女性的ではないけれど首が細いのでどことなく中性的な雰囲気が漂っている。
惚れてるからそう見えるだけ?そんなことない綺麗だ。
身体も洗うつもりだったけどやっぱり断られた。
隅々まで…いっぱい洗ってあげたかったのに。残念。
「…あのさ宮ノ内先輩…先輩の髪洗ってもいい?」
俺の顔を覗きこんでお願いしてくるあの表情はなんなの。
確信犯?可愛い過ぎてくらっと来てしまった。
詩に可愛いを連呼してしまうのはあどけない表情をたまにするから。
しっかりしてるわりに子供っぽいところがあって面倒を見てあげたくなる。
俺自信びっくりだよね。
こんなことした経験今までないんだけどな。
身体はそれぞれ自分で洗って、一緒に湯船に浸かればもう幸せいっぱいで詩のこと後ろから抱きしめてしまう。
身体を洗うのは引いたけど、ここからは引かない。
暴れる詩の耳にキスすると身体が小さく反応する。
耳たぶを甘噛みして、首筋に舌を這わせれば身体が面白いくらい赤くなる。
湯船の温度のせいではないはず。
詩に余裕がなくなってきたのを確認し、最近気になってることを問いかけてみる。
「詩…」
「ん」
「…詩さー…俺の名前って…知ってる?」
「…?」
まったく気にしてないだろうその様子に呆れつつ……不満に思いつつ…。
俺はすでに名前で呼んでいることに対して詩は未だに俺のことを「先輩」呼び。それが正直すごく不満だ。
「俺の名前…フルネームで言ってみ」
「…宮ノ内霧緒…」
「正解。名前…言ってみ?」
「…霧緒…」
「正解!」
ぐるっと詩の前に回り込み詩の顔を両手でやんわり包み込む。
予想通り詩の顔は真っ赤になっている。
「…もっかい、言ってみ?」
「…」
「…」
「キ………キ…リ…」
…
…釣り上げたばかりの魚のような顔をしている…
鰓呼吸できずに口をぱくぱくさせて目はきょどっていて可愛いんだか不細工なんだか。
「キ……リ……ヲ…」
絞り出すように何とか言えたけど、これ言ったうちに入らないよな。
ぺたりと詩のおでこに貼り付いている前髪を後ろに流しながら…
「…俺も詩に名前で呼んでもらいたいんだよね…詩っていつも俺の事…先輩って呼ぶだろ?彼氏なんだから…ちゃんと名前で呼んで欲しいんだけど」
「先輩のこと…!なっ名前で??!!」
チュ
詩の口のすぐ横に軽くキスする。
「!!」
「先輩って言うの禁止ね」
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