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第75話 スーツ姿の男性。

スーツ姿の男性は、俺を霧緒と思ったらしい。 そりゃここ霧緒んちだし、同じ制服着てるし間違えても仕方ないか。 顔を上げて視線が合う。 おお、すごい男前。 誰だろう…この人。 年は……二十代後半かな? 背が高くてさらっとした黒髪で、キリリとした瞳が印象的。 俺より全然年上で重そうな荷物を抱えている。 玄関の端に荷物を降ろす。 俺が玄関にいてちょっと驚いた顔してたけどにっこり笑って、 「こんにちは」 と挨拶してくれた。 「あ!こ、こんにちは!あの…」 我に返って立ち上がる。 わわ!明らかに背が高い!…霧緒より高いかな? 「霧緒くんのお友達かな?」 「…あ、あの霧緒…待ってます」 「…へぇ」 すごい興味津々な目で見られてる。 「君、高校生?」 「え、はい高一ですけど」 「へー!そうなんだ…可愛いね」 「は?」 「可愛いのに、ちょっと色っぽいのなんでだろ…」 なななぜか俺のワイシャツの襟元を指先で触られた。 俺…めっちゃ見られてるんだけど!色っぽいのはそっちだろ!って心の中でツッコミしてしまった。 だだ誰でしょこの人!! 「あー…好きな子いるって…感じかな?可愛いね」 お兄さん?は優雅に跪いて、硬直する俺の手をとり軽く指にキスした。 !!!!ぎゃーーーーーー!!! 心の叫びは実際に出ていたらしく、二階から着替え終えた霧緒が飛び出してきた。 「詩!!」 駆け付けた霧緒に勢いよく抱きしめられる。 「てめぇ!何やってんだよ!」 「何って、可愛い彼に挨拶してるに決まってるだろ?」 「普通に挨拶しろっ!」 「なんでそんなに怒られないといけないの。久しぶりにお父さんにあったのにー」 ?? 「お父さんじゃねえ!」 「え!霧緒のお父さん?!若っ!!」 「だからお父さんじゃないって!」 「ほとんどお父さんだからお父さんって呼んでいいんだよ?」 「だから!!!」 「たっだいまーーーー!!久しぶりの我が家ー!」 扉が開くのと同時に響き渡る澄んだ女性の声。 そこには誰かさんによく似た美人な女性が立っていた。 同じ…エロオーラを放っている…。 「あら霧緒ー!生きてたかしら?汐里くん荷物こっち運んでね」 「…ん?…誰その子…」 霧緒に抱えられている俺の存在を初めて確認したその女性は、俺を怪訝そうに見つめた。 しばらく見つめ… …はっとしたように顔色が変わる。 「ちょ…と…あなた…」 見る見る動揺し、声が震え始めるその女性を…霧緒も汐里くんって呼ばれた人も…驚いて見つめていた。 その瞬間…… 「冴子!」 そう呼ばれ… 霧緒の腕から剝ぎ取られた俺は、今度はこの女性の腕の中に抱きしめられていた。 冴子って、母さんの名前じゃん。

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