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第78話

夕方に霧緒ん家に向かうと、おばさんが出迎えてくれた。 「詩くん、いらっしゃい!上がってー!」 「こんばんは、お邪魔します」 「…」 おばさんは品の良いネイビーのワンピースを着ていて凄く綺麗。 リビングにはすでによい匂いが立ち込めていた。 あー何だろうこの香り!凄くいい香りだー! 「霧緒くん、詩くん来てくれてよかった」 園田さんはエプロン姿だ! スーツではなくシャツとジーンズのラフな格好になっている。おしゃれなカフェの店員さんみたいだ。 「すみません、俺も呼んでいただいて…」 「全然構わないよ!むしろ凄く嬉しい!できるまで少し待っててね」 園田さんはご機嫌でキッチンに戻って行った。 「園田さんが料理作るんだ」 「うちの母さん料理しないから…汐里は元々料理好きとか言ってたかな」 「ふーん」 おばさんも園田さんもすでにワインを飲んでるらしい。 「詩くーん!こっちにおいでー!」 って呼ばれたけど、おばさんの方から来て腕を引っ張られた。 「うぁ!おばさん…ちょっと!」 「おばさんじゃないっ!!友子さん …って…呼んで?」 ひぃ!おばさんって呼ばれた時のおばさ…いや…友子さんめっちゃ怖かった! 「と、友子さん…」 「…はい、詩くん…どうぞ」 …いやこれワインだろ! 当然、横にいた霧緒に取り上げられる。 「…たく、何してんだよ。まだ15歳だぞ」 「じゅ!15!!突き刺さるくらい若いわねー!」 「この間まで中学生だったんだから…何…年の差に衝撃受けてるんだよ…」 「イイワネ。若いって…肌綺麗だし。青春よね」 「でも友子さんは今もとっても綺麗ですよ」 「!う、詩くん…なんていい子…!!!霧緒良かったわねーこんないい子とお友達になれて!」 「はいはいそうだね。…な、詩?」 そう言った霧緒は俺の肩に腕を回して引き寄せた。 「わ、はい…そうですね」 霧緒くん…顔が二ヤついてますよー。 「じゃ、俺…園田さん手伝ってくる」 「…別にいいんじゃね?」 「ほら俺んち和食中心だから…いい匂いするしー気になるんだよね」 「何かされたら叫べよ」 「何かって!…行ってくる」 キッチンとリビングはカウンターで少し仕切られてるくらいなのに、霧緒は俺が園田さんところに行くのが嫌みたいだ。 さっき俺の手にキスしたのをまだ根に持ってるのかな。 「園田さん、俺何か手伝いまーす」 「お、詩くんいいの?…有難う。じゃぁそこのミニトマトとフルーツをカットしてもらえる?できるかな?」 「これ、サラダに入れるんですか?」 「そう」 「はーいわかりました」 ミニトマト、二種類のブドウの粒を半分にカットする。 「へぇ…詩くん包丁の使い方慣れてるね…料理するのかな?」 「はい、普段から飯作ってるんで…」 「いいね!僕も料理好きなんだ!普段どんな料理作るの?」 「和食ばかりです。こういう洋食ってあまり作ったことないです」 「これ食べるときにフレンチドレッシングかけて食べるからね。あとナッツ類いれるとまた美味しいんだよ」 「へー!美味しそう!」 園田さんは楽しそうに俺に色々教えてくれた。 「ふーん、詩くんいいお嫁さんになれそうだね…」 お、お嫁さんって? すっと俺の手に園田さんの手が触れてきた。 小指と薬指の付け根を指先で撫でられる。 … 「俺がフリーだったらほっとかないんだけどなぁ。とっても美味しそうだね」 …なにが美味しそうなのかさっぱりわかりませんが。 「え、えーと…」 「ねぇ…もしかしてすっごい睨んでるあの子が詩くんの彼氏…かな?」 ! はっと顔を上げるとリビングから無機質な目がこちらを…というか園田さんを?睨んでいた。 わー!その目ヤバい霧緒!!カッコいいから!…いや怖いから! つか園田さんに俺たちの事バレてるっぽい!? 「はは!ごめんごめん!僕…バイだからさ。二人のこと見てたらたぶんそうだなって思ったんだ。あ、もちろん今は友子さん一筋だけどね?」 友子さんには聞こえないトーンで喋ってるけど…どさくさに紛れてすごいこと言ってませんか園田さん! すっごい笑ってるし!

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