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第86話
玲二
「…ありがとう詩」
「俺も運動部から部活やらないかってたまに聞かれるけど、興味ないし。スポーツ嫌いじゃないけどさ、家帰って買い物して料理したり庭の掃除したりの方が断然好き」
「それは主夫?ですか詩さん」
「ばあちゃんと一緒にいる時間が大事なのー!」
「最近は宮ノ内先輩といる時間も増えたしね?」
「わー!うわー!絶対言われると思ったー!!」
「あはは良いじゃん!好きなんだから!」
赤くなって焦ってる詩がおかしかった。
「あ、でも玲二くん!菊池先輩とはあの~どうなの?」
「今日は一緒に帰る約束してないよ」
「え」
「え」
「「?」」
「それだけ?」
「それだけ?って、あと何かある?メッセージはしてるけど……」
「おう……そっか!そっか~!なんでもない!」
菊池先輩とは毎日ゲームして遊んでもらってるよ!って言ったら、詩は変な顔してたけどなんで?ほかに何かあったかな?
「俺…玲二のこと大好き。心の友よ、応援してるからな」
よくわからないけど、詩に抱きしめられた。
?
でも、詩に聞いてもらえて良かったな。
心の中にあったもやっとした気持ちがなくなった気がして、もっと早く話しておけば良かった。
でもまさか菊池先輩に先に話してしまうなんて……
先輩は話しやすいから、色んなことをついつい話してしまう。
でも最近ちょっと菊池先輩と会えてない気がする?
タイミングが悪いのか、なかなか一緒に帰れない。
でもそもそもいつも一緒に帰る約束とかしてないし、仕方ないよな。
菊池先輩は先輩で付き合い多そうだし。
そもそも、彼女とかいるのかな?
詩と宮ノ内先輩が付き合うようになってから、自然と二人で帰る機会が増えたっていうだけだったし。
でも……
会えないと、なんか寂しい気がする。
毎晩ゲームで一緒に冒険してるじゃん。
うん。
下校時ふと前を見ると、下校する逢沢先輩とばったり会った。
「あれ屋内くん!今帰り?」
「はい、そうです」
「俺も帰るとこなんだけどさ!一緒に帰ろうぜ」
「はい!今日は部活ないんですか?」
「今日は休み。先生が研修会でいないんだ」
「そっか」
「屋内くんと帰れるってなかなかないから嬉しい!」
「そうですか?」
「…マジ嬉しい!」
逢沢先輩と駅まで一緒に帰ることになった。
「今何の練習してるんですか?」
「今はチャイコフスキーの交響曲第五番」
「えっと…第四楽章とかですか?」
「そうそう」
「ボレロも演奏会でやるらしいから練習はじめたよ」
「へー、パーカス大変ですよね」
「それがぶれない奴がいるからさ、安心なんだよねー!俺たちバイオリンは始め退屈なんだけどさ」
「中学の時だけど、誰かウクレレ見たいって言ってましたよ」
「あははマジで!」
久しぶりにオケトークしてる気がする!
新鮮で楽しいや。
逢沢先輩の家は駅の向こう側みたいなんだけど、駅に着いてからも少し逢沢先輩と立ち話して盛り上がってしまった。
「おい、玲二」
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