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第91話

玲二 ヤバい近くないか? この距離……近い。 じりじりと距離を詰められてる。 「菊池先輩だっけ?あんなチャラそうな先輩に泣かされてさ…付き合ってるの?付き合ってたの?どっちかな」 「いやだからそんなんじゃ」 …… 「駅で会った奴もなんかだらしなくて下品な感じだし、全然君と釣り合わないよ。って言うか本当にあれ弟?屋内くん、俺と付き合わない?俺君の事、マジ大事にするよ……」 類の阿保ー!! お前だらしないとか下品って言われてんじゃん!! 「いや……いやだ……無理です」 「へぇ~ああいう奴らが好みなの?ああいう奴らとエロいことしてんの?」 恐いこいつコワイ!!! 脳裏で警告音が鳴り響いている。 「は、俺さ……屋内くんのエロい姿想像していつも抜いてるんだよね。実際の屋内くんって……どうなんだろ……」 !!!!! 逃げっ!って遅かった。 両手首をつかまれ、壁に身体を押し付けられてしまい、身動きが出来ない。 文学部とは言え、体格の差と普段運動しない僕の力なんてないも同然で、力で跳ね除けることは不可能だった。 !!!! 「んーー!!!」 逢沢先輩は、僕の身体に身体を押し付けてきて、無理やり唇に唇を押し付けてくる。 何とも言えないぶにゃっとした感触に、全身に鳥肌が立つ。 逢沢先輩の荒立つ呼吸が、気持ちが悪い! い、嫌だ!! 弄る手がいやらしく腰から尻を這う。 押し付けられた下半身の一部が、硬くなっているのがわかる。 「ああ……思ったよりももっと細いんだな。屋内くんって……」 「嫌だ嫌だっ!先輩……やめて……まじ嫌……」 「はぁ……めちゃ……可愛い……」 はぁはぁと興奮して腰を擦り付けてくる。 こいつ全然僕の話を聞いてない! 僕の身体を触るのに夢中になりはじめたのか、力が少し弱まる。 隙をついて、類にしたように足を思い切り蹴とばした!! 「!!いっっ!!」 後ろを振り返らずに音楽室を飛び出し、急いで靴に履き替える。 カバンを抱えて必死に走って走って、校舎の外までひたすら走った。 は……は……はぁ……はぁ…… 久しぶりに凄い走った。 さすがに疲れた。 汗が…指先が冷たい。 心臓がバクバクいってる。 何なんだよあいつ……気持ち悪い。 優しい先輩のイメージが吹き飛んでしまった。 身体に残る気色悪い匂いと感覚で鳥肌が止まらない。 唇をひたすら袖口でゴシゴシと擦る。 人の話も聞かないで…… 一人でオナニーしてろよ!クソが! ああなんかもう嫌だ…… 涙も出ない…… 帰ろ……

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