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第94話
宗太
「あ…逢沢先輩に…キスされた…」
「…」
「スッゲー勘違いされて。菊池先輩とか、弟とつき合ってるんだろう?とかわけわからないこと言いやがって……」
「…」
「音楽室で無理やりキスされて、気持ちが悪くて……身体触ってきて。嫌だって言ったのに!全然あいつ!あいつ聞いてくれなくて。足蹴りしてなんとか逃げたけど」
「…」
「僕は……そんなつもり!ないのにっ!あいつ!!」
屋内は話始めたら、怖かったのか涙が止まらなくなってしまい、ぼろぼろ泣き出した。
「…怖かったか?」
「…うん…悔しい…」
「…そうか…そうだよな…悔しいよな…」
体育座りしてうつ向いて泣いている屋内の表情はわからない。
参ったな……
どうすっか…落ち着け俺。
頭を優しく撫でてやると、屋内が更に泣き出した。
机の上にあった箱ティッシュをとって渡してやる。
背中をさすると泣きながら抱きついてこられてしまった。
肩か震えている。
つい両手で優しくさすってしまう。
「……」
はぁ……仕方ない。
両手で屋内の身体を抱きしめ、頭を撫でてやる。
試しに右手で、首筋から太ももにかけて優しく撫でてみる。
細い華奢な身体だ。
…
屋内は俺に抱きついたまま離れない。
背中をトントンしながら…
「おい、屋内ちょっと…」
「…ん」
顔を上げた屋内の顔は、泣いたせいでグショグショだった。
目のまわりは赤くて鼻も赤くて……。
長い前髪を後ろに流してやると、あまり見たことない屋内の顔が露になる。
キリッとした輪郭の澄んだ瞳は、やはり眠そうにしていたけど、凄く綺麗だと思ってしまった。
たぶん、あの時から。
やれやれ……降参だ。
半開きの屋内の唇に、軽くキスをする。
ふにゃっとした感覚と体温。
「今キスしたけど、気持ち悪いか?」
「…」
「…」
「…わからない…です」
「………そか」
チュっともう一度。
「どう?」
「き、気持ち悪く……ない…です」
無表情でパチパチと瞬きをする屋内が面白い。
「さっきからお前の身体、俺の手がむっちゃ触ってるけど?これも平気でしょうか?」
両手はただいま屋内の腰をさわさわとおさわり中。
「へ、平気……です」
あはは!へんな顔!
屋内の髪を撫でながらつい笑ってしまった。
「それは良かった。よしよし、もう大丈夫。明日学校来れそうか?」
「え…あ、はい」
きょとんとした瞳からもう涙は消えていた。
「萩生も心配してたぞ」
「はい。ごめんなさい」
「ちゃんと報告してやれよ」
「はい」
「屋内」
「は、はい!」
「ごめん……もっかいキスしていい?」
唇まであと少しの距離で囁く。
「は、はぃ」
柔らかい唇を再び味わいたくて、おねだり。
重ねるだけの可愛いキスだけど興奮した。
あー!!
このまま押し倒してしまいたーい!!!
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