106 / 506

第106話*

霧緒 そろそろ0時になろうとしていた。 汐里が作った夕飯を食べ、風呂に入ってからはひたすら机に向かっている。 集中しているとさらに頭が冴えてくる。まだまだいけそうだし、眠気もない… 詩はそろそろ寝たかな? あいつ夜更かしできないから、10時過ぎるとあくびがとまらなくなる。 カーテンの隙間から隣を伺うと、30分前まで明かりがついていた部屋は暗闇が支配していた。 ちゃんとタオルケットかけて寝てるかな? 寝相悪いからそのうち頭がベッドから落ちそうになる。あれで起きないって凄い。 タオルケットも何回も掛けてやったりして手間はかかるけど、無意識にすり寄ってくる姿がめちゃくちゃ可愛い。 いとしくてたまらない。 そんなことを思うだけで顔がにやける。 今夜も一緒に寝たらまた抱きたくてとまらなくなるし。 学校でしただけじゃ全然足りない。 詩の身体のことを考えずに無視して突っ走る自分がいる。 それでも何か満たされない感じがして、大分ガッツいてる… はぁ…情けない。 切り替えて再び集中する。 コンコン。 … カチャ 「おこんばんはー」 … 「…何だよ」 どっちだと思ったら、母親じゃない方。 「霧緒くん、お勉強頑張ってるかなーって思って?」 ニコニコしながら俺の部屋に踏み込む母親の恋人、園田汐里はシンプルでデザインのよい黒のスウェットとVネックの黒のTシャツ姿。 ムカツク野郎だけど母親が選んだだけあってイイ男だ。 「入ってくんなよ」 「イイじゃんよー照れるなって!……ふーん、結構難しい問題解いてんじゃん」 「…」 「別に急いでやらないとヤバい学力でもないだろうにね」 「…何か用」 「彼と喧嘩でもした?」 「…するわけねーだろ」 「へー…じゃ何で今日こっち?」 「だから勉強したいからってさっきも言っただろ」 「そんな感じにはお父さんには見えないけどねー」 「…」 「詩くんって、すっごーい可愛いくて、とっても美味しそうだよね?」 !!! 「お前っ!!…いい加減にしろよ」 ムカついて汐里の胸倉を掴み、睨みつけた。 「本気にすんなよ。冗談だってガキが」 「…」 こいつの余裕のある顔は神経を逆なでる。 人を子ども扱いしやがって… 「…悪かったマジで冗談だ。聞き流して~!じゃあ、俺寝るわ!お や す み!」 「うえ」 汐里にやたら強めにハグをされ、嫌なのと苦しいのとで息が詰まった。 おまけに頬に「お休みのチュウだよ」とか言いつつキスしやがった!!! 枕を思い切りドアに投げつける! あいつは何がしたかったんだ!くそ!! はぁ…… ペースを乱された感じがして面白くなかったけど、気持ちを切り替え再び机に向かった。

ともだちにシェアしよう!