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第108話 あ、愛って。

最近、霧緒の様子がおかしいって園田さんが言っていた。 考えてみたら、少し心当たりがある。 緑川先輩を名前呼びした後、怒ってるかと思ったらいつも通りの霧緒で面食らったし。 あんなに友子さん園田さんがいる家に帰るの嫌がってたのに、急に帰ってみたりして、霧緒らしくない。 「昨日は寝ずに一晩中勉強してたみたいだよ」 …ヒエェ…… 「今の霧緒くんは気がつかないうちに自信を失ってるんだと思う。無駄に勉強したりして自身を保とうとしている。俺が思うに、自分が愛されてるかどうか不安で仕方ないのかもしれない」 「愛されてるかって…」 「独占欲の強い子だから、相手にそれだけ返して欲しいって思うのかもしれないし。まぁ今本当に好きな子が出来てどうしたらいいのか彼も戸惑ってるのかもね。俺が来てることも少なからず影響してるだろうね。なんせ俺は霧緒くんから母親を奪ってしまった奴だから…」 切ない表情をする園田さんは、何を思い返しているんだろう。 離婚したのが霧緒が中一のとき。 離婚の直接的な原因は知らないけど、園田さんが関わっていることは確かだろう。 大事な人を奪われた感じだったのかな。 「今の霧緒くんをね、生かすも殺すも詩くんにかかってるってこと。是非彼にちゃんと好きって伝えてあげて?まさか言わなくてもわかるだろ!これが日本の文化だ!みたいな変な考え持ってたりしないよね?今一番彼が欲しい愛は詩くんからの愛だろうから。頑張って!」 ぎゅーって園田さんからハグをされた。 園田さんが帰った後も、脳裏でこのことがぐるぐる回って頭から離れない…。 霧緒が自信を無くしてるとか考えられない! カッコよくてエロくて頭も良くて!!キスもうまいし!エッチもうまい! でも俺って本当に思い返してみても今まで霧緒に好きとか言ったことがない。 そんなこと今さらマジ恥ずかしい。 好きだけど……本当に好きだけど! そもそも愛って何ですか。 どうしたらいいんだ!!!! あ、愛って…なんだ?なんなんだ? 思わずスマホで検索する。 愛 かわいがる。いとしく思う。いつくしむ。いたわる。男女が思いあう。親しみの心でよりかかる。そのものの価値を認め、強く引きつけられる気持。 色んな意味があるんだな。 男同士が思いあっても愛はあるんだぞ!って軽いツッコミ。 いとしく思うかぁ…… 「はぁ……暑いなぁ」 空は雲ってるけど、蒸し暑くて本格的な夏がはじまった気がした。 もうすぐ7月だもんなぁ。 麦茶を飲んで、軽くシャワーを浴びる。 家の縁側に座り、綺麗に掃除された庭を眺めた。 午後になると、日陰になる場所だ。 そこに植えてある、大きなカシワバアジサイがひときわ綺麗に咲いていた。 綺麗だなぁ。霧緒にも見せてやりたい。 連絡しようとしてやめた。 今も部屋で勉強してるのか、今日は連絡を取り合っていない。 ほらね?こういうのも、らしくない。 俺も…… 連絡したらすぐ来るだろうけど、こんな整理出来てない気持ちのままで会ってどうするよ。 いとしく思う、当然そう思う。 いい加減な気持ちでつき合ってなんかいない。 そういう覚悟があるんだけど、あるだけじゃきっと駄目なんだな。 自分の気持ちを正直に相手に伝えるって、俺には難しい。 ** 次の日、友子さん園田さんは日本を離れイギリスに。 学校を休んでいた玲二も元通り学校に登校してきた!嬉しい!! 菊池先輩がきちんと玲二と話をしてくれて解決できたみたい。 ほらね?やっぱり玲二には菊池先輩なんだよ! 玲二が話してくれた今回休んだ理由に衝撃が走ってしまい怒りまくってしまった。 話すことが色々あるから今度俺んちに玲二が遊びに来ることになった! 菊池先輩との中も何やら変化があったみたいだからその辺も聞きたい!! そして俺は …まだ霧緒に好きと言えずもやもやした日を送っていた。

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