113 / 506
第113話
モブ
え、
……この俺が2番。
予備校の実力テストで、どんな奴に負けたかと思ったら、凄くイイ男だった。
ヤバいくらいカッコいい。
宮ノ内霧緒って、日ノ原高の奴らしい。
予備校で同じクラスになったけど、隣に座っているその彼が気になってしまい、あまり授業に集中できなかった。
ノートには最低限のことしか書かないし、ちょっと話しかけてみたら的確な答えが返ってくる。
無表情で何を考えているか分かりにくいけど、無駄なところがなくて気に入ってしまった。
彼と同じ学校の奴等にそいつは有名人らしくや、たら話しかけられて本人は面倒くさそうにしていた。
だから隣の席の俺がやんわりと注意する。
レベルの低いお前らが話しかけてどうするよ。
それからは予備校に来るのが楽しみになった。
やはり彼はモテるみたいで、女子から男子からも良く声をかけられていた。
でも本当に無関心で対応が素っ気ない。
「宮ノ内、モテるのな」
「……は?別に」
それだけの会話しかしてないのに、ドキドキした。
お節介だと思いつつ、彼の隣で彼に無駄に話しかけて来る奴らから宮ノ内を守った。
ちらちら覗き見る彼の横顔は、整っていて綺麗だ。
カッコいいし、色っぽい。
これで頭もイイなんて最高じゃん。
……羨ましいな。
その日、予備校での宮ノ内はかなり体調が悪そうだった。
無理やり彼の鞄を持ち、心配だから送ると言ってついていった。
たまによろめく彼の腕に触れたり近くにいることが出来て嬉しい。
弱っている彼も、不謹慎だけど魅力的に見えた。
少しでもいいから、もっと俺のこと見てくれないかな。そんな謎の欲が出てくる。
どうやら彼は他人にあまり興味がないらしい。
友達とかいるのか?
暫く歩くと、白を基調としたセンスのよい家の前に着いた。
「ここで…いいから……」
「あ、でも心配だから中まで」
「……ウザイからいいって言ってんだ……ろ」
彼の足下がふらつきよろめいたので咄嗟に抱き抱える。
ふわりと宮ノ内の匂いがしてドキドキする。
「あ、宮ノ内……本当大丈夫か?」
「……いいって」
鞄を渡して玄関へ向かう宮ノ内の背中を眺める。
あーここまでかぁ……残念。
家の中まで行きたかったな。
ん?
人の気配がしてその方を向くと、そこには男子が立っていた。
中学生?宮ノ内の後ろ姿をじーっと見つめている。
なんだぁ?宮ノ内のストーカーか?
予備校の前にもそういえば待ってる子がいたな。
女子だったけど、目の前にいるのは男子だ。ちょっと可愛い。
「おい君だれ。何?」
「あの……えーと」
「はぁー君あんまりさ、宮ノ内の周りうろうろしないでくれるかな?彼は今勉強で忙しいし、スッゴい迷惑なんだよね?」
「え」
「もしかして君、予備校からつけて来たとか?何ファンなの?」
「いや、そんなんじゃ。キ……宮ノ内先輩、帰って来たのかなぁって……」
「だったら何?君は宮ノ内の後輩か?帰ってきたら何なの?ふん……彼は俺がちゃんと送ったから。ほらほら!もう帰りなよ」
「あの、貴方は誰ですか」
「君に答える必要ないよね?」
「そう……ですよね」
そう言うと、宮ノ内の追っかけは走り去って行った。
はーやれやれ。宮ノ内も大変だな。
学校でも毎日こんな感じなんだろうか。
俺が近くにいて、彼を守ってやりたい。
さて、俺も帰ろう。
今日は宮ノ内に触れてしまった。
彼とはレベルの高い会話ができて凄く嬉しいし、充実した気持ちになる。
もっともっと、彼と仲良くなりたい。
ともだちにシェアしよう!