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第117話*
霧緒
ある意味ヤバいけど……
何故ここに?
窓を見ると、カーテンが少し開いていた。
最近寝るときは窓を少し開けて寝ているから、恐らくここからだな。
タオルケット越しに俺にしがみつく詩は、スヤスヤ寝息を立てていて起きる気配がない。
頭を撫でると、柔らかい髪がさらりと指の間を擽る。
驚いたけど、今の俺の顔……絶対にやけてる。
久しぶりの詩の感触にすげードキドキしていた。
何やってんだよ、こいつは…
つか、足痺れてるんだけど、いつからここに居たんだ?
足を何とかずらしてみると、ピクリと詩が反応する。
「ん……」
「おい」
「………ん?…………あっ!」
詩はがばっと寝ぼけた顔で起き上がると、一瞬ここがどこかわからないような顔をした。
「……」
「…………はよ」
声をかけると、ぎょっとしたような顔をしてまた俺の身体にしがみ付く。
なんなのこの子。
「……お、俺は怒ってるんだからな」
「……」
「最近の霧緒の態度がなってないから、物申しに来たっ」
寝てたじゃねーか。
「うん…」
「具合………悪いんだろ?」
「え」
「体調悪くて、他の学校の奴に送ってもらってただろ。今日……」
「そう………だっけ?」
「そうなんだよ!そんな奴と、家の前で抱き合ってたのは誰だよっ!」
「……」
「具合悪くてもあんな奴に気許すなよ。見てた俺の気持ちわかるか?あいつに何?宮ノ内のファン?とか言われたんだぞくそ」
思い返してみるとそんな奴がくっついて来たような。無関心さと体調の悪さでほとんど顔も覚えていない……当然名前も。
抱き合っていたとか全く心当たりがない。でも詩のこの様子を見ると言ってることは本当なんだろう。
詩はタオルケットにしがみついたままだ。顔も押しつけられていて表情もわからない。
「ごめん、具合は薬飲んだからマシになった」
「それと最近、がり勉みたく毎日毎日勉強してるけどそんなに勉強が大事なんですか」
「……」
「俺よりも勉強が好きなんですか」
「……いや」
「じゃぁなんで毎日追われるようにやってんだよ。お前が何を考えてるかわからないけど、ほったらかしにされてる俺はすっげぇ迷惑してんだよ。頭いいんだから、彼氏の為に時間作るくらいできるだろ。少しでもいいから構ってくれないと俺……寂しくて……一年生は暇してんだよ…」
「詩……」
ゆっくりと顔を上げる詩の表情は、本当に怒っていて暗闇でもわかるくらい瞳がきらきらしていた。
尖っている口元が可愛い。
にじり寄る詩の両腕が首に巻きつき、思い切り抱きしめられた。
久しぶりの詩のいい匂いが半端なく強烈で、うまく言葉にならない。
細い背中に腕を回し、抱きしめ返す。
「寂しかった?」
「……ん」
「そっか……ごめん」
…
「いや、俺の方こそ……ごめん……」
「?」
「…ごめん…」
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