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第118話*

霧緒 ごめんってなんだよ。 「…」 「俺、霧緒に言わなきゃと思って、でも面と向かって言えなくて。そんな自分にイライラして」 「…」 「もっと普通に言ってればこんなに悩まないで済んだのに。霧緒も変にならずに済んだかもしれないのに……ごめん」 おい、悩むって何を悩むんだ? 詩はずっと俺を抱きしめたまま呟く。 抱きしめる力が更に強くなる。 「……詩?」 「霧緒、俺さ霧緒のこと……好き…だから。毎日一緒に居たいって思うくらい大好きだから」 「…」 詩の表情はわからないけど、早い鼓動が胸に伝わってくる。 「好きって言う決心ついたのが夜中で、そしたらもう寝れなくて。これを逃したらもう言えなくなりそうだったから居ても立ってもいられず……」 「……」 「夜分にスミマセンです。………本当」 じわじわと整理中。 脳内処理に時間がかかってるけど、つまり詩は俺に好きってずっと言いたかった? それで悩んでいたのか? なんだそれ、言わなくてもわかってるし。 一瞬ヒヤッとした。別れ話かと思ったじゃないか。 抱きついてた詩を抱きしめ、ゆっくりベッドへと押し倒す。 足が痺れていておかしかったけど、どうでもいい。 つか、めっちゃ顔が赤いぞ詩。 「ちょ…!」 押し倒して両手で詩の前髪を掻き分け、顔がよく見えるようにする。 きょどってる顔が面白い。 でも嬉しい……… そんなことでこいつが一生懸命悩んでたのかと思うと、馬鹿らしくてさらに嬉しい。 「何……俺に好きだって言いにきたの?」 「…はい」 「こんな真夜中に?」 「はい」 親指で、詩の赤い頬をゆっくりと撫でる。 「何をしてるんだか」 「じ、自分でもそう思いました……」 「俺の体調が良くないのも知ってたのに?」 「お、お見舞いも………兼ねております?」 ひきつって誤魔化す笑顔がガキっぽい。 柔らかい下唇をふにっと触り、キスをしようと顔を近づけると、先に詩の方から軽くキスをされた。 そのまま両手が伸びてきて、俺の首筋に触れる。 「最近、霧緒がらしくないから心配してた」 「……」 「ちょっと俺も考えてさ、霧緒は俺に好きとかちゃんと言ってくれるのに、俺って言葉にして全然言ってなくて。本当サイテーだなって思って反省したんだ」 「ん」 「でもさ!好きとか大好きって、確かにそうなんだけど……俺なりの気持ちを伝えるには何か違うなーって思って。何かこうもっとさ!ずっと一緒に居たい!とか、毎日一緒にご飯美味しく食べたい!とか思うんだけど、そういう気持ちって……好きって言葉とは違うなーって思うんだよ。これって」 続けようとする詩の口を咄嗟に手のひらでふさぐ。 「はーい!ストップストップ!詩~~待て!!」 「ふがが?」 「わかったから………わかったからそれ以上……言うな」 この阿保。 真剣に考えたんだろうけど、無自覚になんてこと言ってんだ! 今の言葉だけで、嬉しすぎてもやもやしていた何かがぶっ飛んだ! 「詩の気持ち……十分わかったから。今は好きでいいと思う。それか……愛してるとか?」 「あ、あいしてる!か…!!」 首筋に触れていた詩の手を取り、自分の指を絡めた。 愛おしいこの手を離したくない。 「そう…愛してる」 容赦なく唇にかぶりついた。

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