134 / 506

第134話

「予備校にお迎え?」 霧緒ん家のリビングで二人ごろごろしてるとそんな話になった。 「そう」 「なんで?」 「あれ…気にならない?」 「…」 「あいつのこと」 あいつ…以前霧緒が体調崩したときに家の前であった他校の奴。 霧緒と抱き合ってる感じのシーンと上から目線の物言いが蘇る。 面白くない。 俺は霧緒のファンじゃねー。 「…」 「あいつと今さ、席が隣同士なんだよねー」 「俺、あいつヤダ」 「だろ?恋人だって紹介してやるよ」 「誰を?」 「……お前しかいないだろ」 「し、してほしい。けど、なんか物凄い勇気がいるな」 「いい方法あるけど?」 「いい方法?」 「そう」 にっこり笑う霧緒は本当危ないって俺知ってるはずなのに、まんまとのせられてしまった。 ワンピースタイプのセーラー服は、霧緒のお母さん友子さんの学生時代に着ていたもの。 うちの学校はもともと女子高で、その当時は制服がセーラー服だったらしい。 その後共学になった際にブレザーに変更されたようだ。 制服は大切に保管してあったのかとても綺麗。 ウィッグはどこから手に入れたのか俺もわからないから霧緒に聞いたけど、詳しく教えてくれなかった。 ちなみに、元カノのとか霧緒の趣味とかそんなのじゃないっておっしゃってました。 「え!女装!!??ちょっとまて無理だろ」 「詩細いし、俺の見立ては大丈夫だと思う」 「いや、俺170あるし!」 「今時170㎝の女なんてざらだよ」 ぱふっとウィッグを被せられる。 まじカンベンなんだけど、目の前の彼氏が超楽しそうにしてる。 「おーやばい……いいかも」 「へ?」 顎に手を添えられ、上に向けられた。 霧緒が俺のことがガン見してて。なんだよ相変わらず無駄にカッコいいな。 ウィッグ越しに頭を撫でられる。 あ、ちょっとまってこの雰囲気ヤバい。 唇にキス…ではなく…顎に霧緒の唇が触れる。 顎のラインにそって耳朶へ…首筋を舌が這う。 く、くすぐいし、ぞくぞくする…… 「詩……」 「ん……な、なに……」 耳元で囁かれ、霧緒の指が俺の手を撫でつけ指に絡む。 甘い雰囲気にころっと騙されてしまい、気がついたらほんのりメイクまでされた。 メイク道具も、ちろん友子さんのだ。 … お、俺は一体何やってんだ。 化粧なんてなぜできるんだ霧緒! 恥ずかしくて鏡が見れない。 「自信作だから安心して」 って、言われたけど全然嬉しくない。 駅前まで来るのに、建物の窓ガラスに映る自分の姿はどうしても避けられない。 自分じゃないみたいで気持ちが悪かった。 そして悲しいかな女の子らしく……という意識がちょっと働く。 小股で歩いてたらふくらはぎがおかしくなった。 「あの、彼氏来るんですみません。ご、ごめんなさい」 「えーそっかー残念だなぁーじゃあね」 はぁ…… 何とか回避出来て、ほっとしたのもつかの間。 「ね!でもずっとここいるよね?彼氏って本当に来るの?ちょっとだけさー俺とつきあわない?おごるから」 「ええ!?」 肩を抱かれて引き寄せられた。 ちょちょちょ!!!!ちょっと待てぃ! 頭に来て思い切り振り払ってやろうと思った瞬間。 「おいやめろよ」 俺の肩に回されていた腕が誰かによって剥ぎ取られた。

ともだちにシェアしよう!